artscapeレビュー
進藤環「飛び越える、道をつないで」
2014年08月15日号
会期:2014/07/09~2014/08/09
ギャラリー・アートアンリミテッド[東京都]
植物や風景の写真をカット・アンド・ペーストしてコラージュを作り、それを複写・プリントして作品化する進藤環の仕事には以前から注目してきた。その、この世のものとは思えない情景の構築力が、このところ、より高まってきているように感じていたのだが、今回東京・六本木のギャラリー・アートアンリミテッドで開催された個展では、さらに新境地というべき作品を見せてくれた。
今年になってから、長崎県五島列島を中心に撮影されているシリーズでは、隠れキリシタンの住居跡や、ハンセン氏病患者たちが暮らしていた場所、産業遺産などを画面に積極的に取り入れている。そのことによって、自然と人工物が見境なく混じりあう、何とも奇妙なユートピア(あるいは反ユートピア)が出現してきていた。このような表現の冒険は大いに歓迎すべきだろう。なお同時期には、横浜市港北区の東京綜合写真専門学校のギャラリーSpace@56で「響く、回遊する」と題する作品が「公開制作」されていた(6月17日~9月6日)。こちらは、壁二面に張り巡らされた作品の規模がかなり大きいのと、それが少しずつ生成・変化していくという試みが意欲的だ。ここでも、進藤の表現力の高まりを感じとることができた。
言うい忘れる所だったが、展覧会や作品のタイトルのつけ方によくあらわれているように、彼女は言葉を扱う能力もとても高い。詩的言語と画像の組み合わせからも、新たな世界が見えてきそうな気がする。
2014/07/23(水)(飯沢耕太郎)