artscapeレビュー
大谷幸夫《千葉市美術館・中央区役所》ほか
2015年03月15日号
[千葉県]
ダン・グレアム展以来だから、12年ぶりくらいに大谷幸夫の設計による《千葉市美術館・中央区役所》(1994)を訪れた。完成当初、旧川崎銀行千葉支店(1927)をまるごと、入れ子状に包みながら、近代建築を保存するダイナミックな鞘堂形式の空間が話題だったが、いま見ると、装飾的なポストモダンの残り香をあちこちに見出すことができる。流行が変わると、渦中の時代だと見えないものが、後から見えてくるのは興味深い。続いて、《千葉県立中央図書館》(1968)と、段差のある地形をいかしてホールをおさめる《千葉県文化会館》(1967)を見学した。いずれも大高正人のデザインである。特に前者は力強いフレームが空間を規定し、メタボリズム的な延長可能性も想像させるだろう。ともあれ、1960年代の建築が、いまも現役で使われており、好感がもてる。今後も長く残ってほしい建築だ。
写真:上=大谷幸夫《千葉市美術館・中央区役所》 中=大高正人《千葉県立中央図書館》 下=大高正人《千葉県文化会館》
2014/02/07(土)(五十嵐太郎)