artscapeレビュー

小平雅尋「他なるもの」

2015年03月15日号

会期:2015/02/07~2015/03/07

プラザ・ギャラリー/タカ・イシイギャラリー フォトグラフィー/フィルム[東京都]

東京・仙川のプラザギャラリーと六本木のタカ・イシイギャラリー フォトグラフィー/フィルムで、小平雅尋の「他なるもの」展が開催された。このシリーズは2013年の表参道画廊での個展で既に発表されているが、新作を加え、プリントの大きさを変えて2箇所の会場でほぼ同時期に開催されることで、以前とは違った眺めが見えてきているように感じた。
写されているのは、エスカレーターのような身近な事物から、やや距離を置いて撮影された風景までかなり幅が広い、昆虫や人の体の一部をクローズアップで撮影した作品もある。だが驚くべきことは、それらのすべてがある共通の質感を備え、互いに強い絆で結びついているように見えることだ。同展のカタログを兼ねた小冊子に倉石信乃が書いたエッセイを引用すれば、すべてが写真家から「等距離」にあるように見えてくるのだ。
「無限大の彼方に光る星辰も、眼前にいるあなたのいま開いたばかりの掌も、「私」には同じ隔たりだ。だから「私」はどこへでも行くことができる。たとえこの場を動かないときにも」
たしかに、倉石がいうように、小平の写真を見ていると森羅万象の一角からイメージを「等距離」で切り出してくる小平の選択が、きわめて厳密で揺るぎないものであることがわかる。しかも特筆すべきなのは、その手つきが決して小難しく窮屈なものではなく、ふっと頬が緩むような柔らかなユーモアをたたえているように見えてくることだ。理屈ではなく五感を解放して味わうべき、チャーミングな写真群といえるのではないだろうか。

会期: 2015年2月7日(土) ~ 3月1日(日)
会場: プラザ・ギャラリー
会期: 2015年2月7日(土)~ 3月7日(土)
会場: タカ・イシイギャラリー フォトグラフィー/フィルム

2015/02/15(日)(飯沢耕太郎)

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