2019年09月15日号
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artscapeレビュー

野町和嘉「天空の渚」

2015年03月15日号

会期:2016年1月15日(金)~2016年2月14日(日)

916[東京都]

19世紀の写真の発明公表以来、写真家たちはまだ見ぬ未知の世界のイメージを採集し、それらを持ち帰ることに情熱を傾けてきた。写真を見る観客の欲求に応えるように、彼らはさらに遠くにある、よりスペクタクルな事象を撮影しようとしてきたのだが、野町和嘉の仕事はまさにその系譜に連なるものといえるだろう。デビュー作の『SAHARA』(1977、日本語版は1978)以来、ナイル川流域、チベット、メッカ巡礼、インドの聖地、アンデス奥地など、撮影の範囲を全世界に広げ、雑誌掲載、写真集、写真展などを通じて、スケールの大きな写真群を発表し続けてきた。
今回の「天空の渚」も、圧倒的な「遠さ」と「大きさ」を感じさせるシリーズである。2015年初頭、野町は中南米のメキシコ、ボリビア、チリ、アルゼンチンを巡る旅に出た。めくるめく装飾に彩られたメキシコのサンタマリア・トナンツィントラ教会、「天空の鏡」と化したボリビアのウユニ塩原、青みがかった氷が絶えず崩れ落ちるアルゼンチンのペリト・モレノ氷河、マゼラン海峡に取り残された巨大な廃船──それらを撮影するために5060万画素のデジタル一眼レフ、キヤノンEOS 5Dsが駆使されている。結果的に、今回の作品もまた、未知の世界に出会いたいという観客の欲求を満たす視覚的なエンターテインメントとして、充分に成立していたと思う。
ただ21世紀を迎え、あらゆるイメージに既視感がつきまとうようになってしまった現在、「遠さ」と「大きさ」を供給し続ける営みが、どこまで続けられるのかという疑問は残る。デジタルカメラの高画素化も、そろそろ限界に近づきつつあるのではないだろうか。野町の、ある意味愚直な撮影ぶりがどこまで突き抜けていくのか、その行方を見てみたい。だが逆に、足元に目を転じることで、別の眺めが見えてくるのではないかとも思う。

2016/02/03(水)(飯沢耕太郎)

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