2019年09月01日号
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artscapeレビュー

宇佐美雅浩「Manda-la」

2015年03月15日号

会期:2015/02/13~2015/02/28

Mizuma Art Gallery[東京都]

思いがけない角度から「震災後の写真」のあり方を照らし出す作品といえるのではないだろうか。宇佐美雅浩は1990年代半ばから、友人の部屋などをその人の私物や関連する人物を配置して撮影するというプロジェクトを進めてきた。ところが、東日本大震災以降、その作品の方向性が大きく変わってくる。より社会性の強い人物や場所が選ばれるようになり、制作のプロセスも数ヶ月から数年を要する大規模なプロジェクトへと発展していったのだ。
今回展示された20点余の作品は、どれも練り上げられたコンセプトで、大変なエネルギーを傾注して作り上げられている。実際に震災を直接的に扱っているのは、大津波で気仙沼の市街地に打ち上げられた共徳丸の前で撮影された「伊東雄一郎 気仙沼(宮城)2013/ワインバー風の広場 マスター」と白い防護服を着た人々が花見に興じる「佐々木道範 佐々木るり 福島 2013/浄土真宗大谷派真行寺住職、同朋幼稚園理事長、妻」の2点だが、広島の「原爆の子」執筆者の会、アイヌ民族運動家、秋葉原の書店経営者などをモデルとした他の作品からも、震災後の社会状況を見据えて制作していることがヴィヴィッドに伝わってくる。作品のスタイルもその指向性も、これまでの日本の「写真家」たちとはまったく異質のものであり、それだけに、このシリーズがこれからどんな風に展開していくのかという期待が膨らむ。
ただ、物や人物たちが、過剰に画面の隅々まで埋め尽くしていく視覚的効果はたしかに目覚ましいものだが、これでもか、これでもかと同じような趣向を見せつけられるとやや食傷気味になってくる。テーマによっては、やや異なる画面構築のやり方をとってもいいのではないかとも思う。個人的な嗜好と社会性とをよりラジカルに噛み合わせていくと、さらにユニークなプロジェクトに成長していくのではないだろうか。

2015/02/24(火)(飯沢耕太郎)

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