2019年09月15日号
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artscapeレビュー

山本基 原点回帰

2015年03月15日号

会期:2015/01/30~2015/03/01

ポーラミュージアムアネックス[東京都]

奥行き15メートルほどの黒い床に、塩で渦巻き状のパターンが描かれている。渦潮のようにも銀河のようにも見えるけど、もっと卑近な連想では洗濯水や汚染されて泡立った河川を思い出してしまう。それは中心から等間隔に渦巻き線を広げていくのではなく、ところどころ淀みながら小さなウロコを重ねていくように塩を盛ってるため、白い泡の連なりに見えるからだろう。もちろん汚染水を思い出すからといって汚いというのではなく、清濁や聖俗、あるいは極大と極小といったスケールを超えた普遍的な美が感じられるのだ。それには塩という素材が大きく役立っているかもしれない。塩には穢れを払うとか浄めるといった意味があり、また生命を育む潮や海にも通じるが、そんな象徴性を省いても、塩そのものの「粒子性」に美しさの秘密があるんじゃないか。同じパターンを絵具で描くのとは違い、塩の粒子を手作業で盛ってるため、輪郭がボケてフラクタルに近くなっているのだ。だから遠目には白黒がはっきりしているが、近づくとややソフトフォーカス気味に見え、目に優しくなじむ。しかも平面ではなくわずかに盛り上がってるので、低い位置からながめると砂丘のような奇妙な風景のようにも見えるのだ。ちなみにここで使われた塩の粒子は約2億粒。これを1粒1粒並べていったらいつまでたっても終わらないので、たぶんひとつかみ1万粒ずつくらい盛っていったんだろう。それでも同じ行為を2万回は繰り返さなければならず、気の遠くなるような作業であることに変わりはない。

2015/02/26(木)(村田真)

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