artscapeレビュー
あいちアートプログラム アーツ・チャレンジ2015
2015年03月15日号
会期:2015/02/17~2015/03/01
愛知芸術文化センター[愛知県]
愛知芸術文化センターのあちこちをまわりながら、アーツ・チャレンジ2015の展示を見る。選考審査を担当したのだが、むしろそれぞれの場所が作品を選んでいるような気分になった。この公募の最大の特徴は、ホワイトキューブ以外のクセのある空間を使うこと。つまり、若手アーティストのチャレンジだけでなく、場所への挑戦なのである。幾つかの作品を紹介しよう。
11階の展望回廊は、光あふれる空間で、その変化を音に変える片岡純也。12階は、家庭に死蔵された作品を公的なギャラリーに持ち込む藤井龍、7mの細長いテーブルの上の歪んだ日用品が「揺れる大地」感をただよわす廣瀬菜々&永谷一馬。2階の巨大吹抜けのフォーラムでは、繊細な無数の線が光できらめきながら、空間の現象をつくる千田泰広。地下1階では、デッドスペースを巧みに作品の条件とし、多視点の運動を誘発する2.5次元と言うべき記憶の絵画を描く田中里奈。地下通路展示ケースは、伊佐治雄悟の日用品を集積する幾何学的な小品。南玄関の階段踊り場では、音と振動を発生させるために、ここに設置した山田哲平の踊る洋服と三上俊希の膨らむ黒い袋群は、ともに動きを伴い、生命を感じさせる。地下2階の通路には、忘れたい言葉をリテラルに水に流す、コミカルだけどドキッとする星崎あいの映像作品。地下2階フォーラムでは、場の特性を考えて、壁に対する水平軸を床に対する垂直軸に転換した後藤あこの彫刻。将来の活躍を期待したい。
写真:左上から、片岡純也、廣瀬菜々&永谷一馬、田中里奈の作品。右上から、伊佐治雄悟、三上俊希、後藤あこ
2015/02/21(土)(五十嵐太郎)