2019年11月15日号
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artscapeレビュー

須田一政「釜ヶ崎」

2015年03月15日号

会期:2015/02/06~2015/02/28

ZEN FOTO GALLERY[東京都]

須田一政は、2014年8月に大阪・釜ヶ崎(西成地区)を撮りおろした。今回のZEN FOTO GALLERYの展示では、その6×7及び35ミリ判による新作に加えて、2000年に撮影したというハーフサイズ・カメラによる縦位置の画面を2コマ分プリントした作品(全16点)が並んでいた。
須田と釜ヶ崎というのは、ありそうでなかなかない絶妙な組み合わせなのではないかと思う。この日雇い労働者の街は、写真家たちを引きつける魅力的な被写体の宝庫であり、1950~60年代の井上青龍以来、数々の「名作」を生んできた。『日本カメラ』(2015年2月号)の「口絵ノート」に「私のような社会派にはほど遠い写真家が今更撮るのはどうかなと考えつつ」と書いてあるのを見てもわかるように、須田はむろんそれらを充分承知の上で、いつもより肩の力を抜いて、飄々と街と人のたたずまいにカメラを向けている。その結果として、この街を覆っているざらついた荒々しい触感が、やや軽みと丸みを帯び、エロス的としかいいようのない艶かしい雰囲気が漂ってきているように見えるのが興味深い。須田の眼差しの先で、乾ききった真夏の釜ヶ崎の光景が、しっとりとした、みずみずしい情感をたたえてよみがえってきているのだ。どうやら街との相性は抜群のようなので、また機会があれば、ぜひ撮り続けていってほしいものだ。
なお、オープニングには間に合わなかったのだが、会期に合わせて2冊組の写真集『走馬灯のように ─ 釜ヶ崎2000-2014』(ZEN FOTO GALLERY)が刊行された。

2015/02/17(火)(飯沢耕太郎)

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