artscapeレビュー
没後100年 小林清親 展
2015年03月15日号
会期:2015/02/07~2015/03/22
静岡市美術館[静岡県]
掛川から静岡へ、こだまだと15分、鈍行だと45分かかるが、料金は半分で済むのでローカル線を選択。明治期に活躍した浮世絵師、小林清親の没後100年展だそうだ。明治に入ると江戸期の浮世絵師と違って、描くものが洋風建築や鉄道、博覧会、戦争など近代化し、清親の表現も「光線画」といわれるほどの陰影の強調や正確な遠近法を駆使した写実表現に変わり、これ以上進むと浮世絵を超えてしまうところまで突き進んでいった。“最後の浮世絵師”と呼ばれるゆえんである。一方、極端な遠景と近景の組み合わせやケレン味たっぷりのポーズなど、浮世絵ならではの意表を突く表現も残している。そんな端境期ならではの驚くべき作例が、日清戦争時につくられた《我艦隊黄海ニ於清艦ヲ撃チ沈ル之図》。残念ながら後期の出品で実物は見られなかったが、カタログに収められている図版を見ると、清の戦艦が沈んでいく水中の様子を、まるで水槽の魚でもながめるように描いているのだ。近代以前にはこのような視覚体験はありえなかったし、近代以後はこのような美術表現はありえなかった。明治にまでズレ込んだ“最後の浮世絵師”ならではの表現といえるだろう。
2015/02/07(土)(村田真)