2022年08月01日号
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artscapeレビュー

ニュー・スナップショット

2011年02月15日号

会期:2010/12/11~2011/02/06

東京都写真美術館 2F展示室[東京都]

「日本の新進作家展 vol.9」として「スナップショットの魅力」展と併催されているのが「ニュー・スナップショット」展。出品作家は、池田宏彦、小畑雄嗣、白井里美、中村ハルコ、山城知佳子、結城臣雄の6人である。
中村ハルコの作品がこういうかたちで紹介されることが、まずとてもよかったと思う。彼女は2000年に自らの出産体験に題材を得た「海からの贈り物」で写真新世紀のグランプリを受賞し、将来を嘱望されていた。ところが2005年に43歳という若さで膵臓がんのため夭折する。今回展示された「光の音」は、イタリア・トスカーナ地方で農業を営む一家を何度となく足を運んで撮影し続けたシリーズで、生前にはきちんとしたかたちで発表されることがなかったものだ。その心の昂りをそのまま刻みつけた、弾むようなスナップショットを見ていると、もっとこの先を見てみたかったという思いにとらえられる。それはそれとして、土地と人とのかかわりを感情や生命力の流れとして見つめ返す「女性形」のドキュメンタリー写真の可能性を強く示唆する作品といえるだろう。
だが今回の展覧会でいえば、後半のパートに展示されていた山城知佳子、白井里美、池田宏彦の作品の方が「ニュー・スナップショット」という趣旨にふさわしいといえそうだ。彼らの仕事は、それぞれ沖縄、ニューヨーク、イスラエルのネゲヴ砂漠を舞台に、パフォーマンスや演出的な要素を強く打ち出している。土門拳は1950年代に「リアリズム写真」を提唱し、「絶対非演出の絶対スナップ」というテーゼを主張したが、そこから時代は大きく隔たってしまったということだろう。もはやスナップショットとパフォーマンスは相容れないものではなく、時には見分けがつかないほどに入り混じっていることさえある。だが、演出過剰な作品が面白いかといえば、必ずしもそうとは言い切れない。どこか「見えざる神の手」に身を委ねるようなところもあっていいはずで、写真家たちにはそのあたりのバランス感覚が求められているのではないだろうか。

2011/01/06(木)(飯沢耕太郎)

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