artscapeレビュー

はろー、言ってみる/ミシシッピ展 hello it's me.

2011年02月15日号

会期:2011/01/18~2011/01/28

ギャラリーH2O[京都府]

2009年から複数のアーティストとともにコミック誌『KYOCO(キョーコ)』を発行するなど、コミック作家としても活動しているmississippiの個展。印刷された小さな誌面やグループ展でその作品を見ることはあったが、これまで彼の大きなペインティングを目にする機会はほとんどなかった。2010年の12月に東京で開催された個展で出品されたドローイングに加え、新作のペインティングが発表された今展、展示数は少なかったが、それまでとは異なる面で、その作品世界の魅力がうかがえるものだった。やや暗いグレーのトーンで描かれた情景の夢のような浮遊感が物語を誘発し、場面への想像をかき立てる。カラスや人物など、かわいいのかそうでないのか微妙なモチーフやそれらの表情も、つかみどころのないイメージでかえって記憶に残る。《1月16日》という 小さな作品が壁面の隅の低い位置にぽつんと展示されていた。聞くとこれは会期が始まってから展示されたもので、搬入日、降り止まない雪のなかを歩く自らの足下を描いたものだという。 さらっと描いたように見えるし、これだけが他とは雰囲気も異なる。しかし、いずれ融ける地面の雪を見つめながら、作品をしっかりと抱き指先に力を入れて会場へ向かう作家の姿や、冷たい空気に触れるリアルな感覚が想像できて、もっともこの作家の情緒を見ることができる一点に感じた。今後の活動展開も楽しみだ。

2011/01/21(金)(酒井千穂)

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