2022年07月01日号
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artscapeレビュー

麻生三郎 展

2011年02月15日号

会期:2011/01/05~2011/02/20

京都国立近代美術館[京都府]

戦時中に松本竣介、井上長三郎らと新人画会を結成、戦後1964年までは自由美術家協会に参加し、人間の根源的存在イメージを追求した麻生三郎の展覧会。没後10年となるが、今展でそれが謳われていないのは、その暗い画風や活動から、戦中・戦後に重心を置いて語られてきたこの画家を、過去の人として回顧するにとどまらず、今日的問題につなげて鑑み再考しようという意図があってのこと。会場には1930年代から晩年までの 油彩、素描、立体など約130点が展示されている。時代ごとに分けた3部の構成だが、画面に混濁する赤い色彩や、闇の背景から対象をあぶり出そうとするような図と地の区別が曖昧な絵画は、不安感をともなう緊張感と重たい空気に覆われている。数のヴォリュームもさることながら、それらの暗い画面に表われた、世の中と対峙し自らと現実の関係や自己を凝視する画家のまなざし、その執拗な追求は、こちらが尻込みしそうなほどの迫力。一緒した両親は、はじめは一点ずつじっくりと見ていたのだが、「だんだん押しつぶされそうな気分になって最後はぐったりしてしまった」と言っていた。たしかに、じっくりと見れば見るほど精神的にも疲れてしまう展覧会だった。自らの目で徹底的に世界を見つめようとする態度とそれを絵画に表わそうとする彼のエネルギーは圧倒的だ。しかし、だからこそ若い人たちに薦めたい展覧会でもあった。

2011/01/04(火)(酒井千穂)

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