2021年12月01日号
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artscapeレビュー

没後20年 孤高のモダニスト 福田勝治 写真展

2011年02月15日号

会期:2011/01/15~2011/01/29

ときの忘れもの[東京都]

福田勝治は1899年生まれだから、木村伊兵衛より2歳、土門拳より10歳年長の写真家。戦前から戦後にかけての一時期は、『女の写し方』(アルス、1937)が当時としては異例の売行きを示すなど、その大衆的な人気は木村、土門を凌いでいたほどだった。ところが1970年代以降になると、ほぼ忘れられた存在になり、91年に没後はほとんどその業績を顧みられることもなくなった。その大きな理由は、彼の作風が極端な耽美主義であり、リアリズム、スナップショットといった日本の写真表現の主流からは相当に隔たっていたためだろう。
今回の福田勝治展は、彼の戦後の代表作である《光の貝殻(ヌード)》(1949)、《心の小窓(藤田泰子)》(同)、《Still Life(静物)》(1952)と、1955年のイタリア滞在時にポンペイ、オスティアなどで撮影された風景作品15点を展示するもので、規模は小さいがひさびさの彼の回顧展となるものである。むしろデジタル化以降の多様化し、拡散していこうとする写真の状況において、福田の練り上げられた美意識と深みのあるモノクロームのプリントの技術を味わうことは意義深いのではないだろうか。彼のような、自己の美的世界を純粋に探求していこうとする写真家たちが、どうしても片隅に追いやられてしまうことにも、日本の写真表現の歪み(それを必ずしも否定的に捉える必要はないが)が端的にあらわれているようにも思える。

2011/01/24(月)(飯沢耕太郎)

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