artscapeレビュー
2012年06月15日号のレビュー/プレビュー
J'ai deux amours
会期:2011/11/16~2012/06/24
palais de la port dorée[フランス パリ]
移民歴史博物館(palais de la port dorée)にて、それに関連したテーマの現代美術の企画展を見る。以前に訪れたときと、施設の名称が変わったが、もともと植民地博覧会のメイン施設としてつくられた建築だ。ゆえに、非西洋圏の文化を扱うことには変わりがない。当時のアール・デコの良質なインテリア・デザインも含まれているが、室内外の装飾や壁画における世界の描き方において、植民地博の表象がしっかり建築に刻まれている。側面の壁には、十字軍以来のフランスから海外進出した歴史的な人物の名前が並ぶ。
2012/05/29(火)(五十嵐太郎)
オーギャスト・ペレ《シャンゼリゼ劇場》
会期:2012/05/29
シャンゼリゼ劇場[フランス パリ]
シャンゼリゼ劇場にて、モーツァルトのオペラ「コジ・ファン・トウッテ」を鑑賞した。オーギュスト・ペレが設計した近代建築も、来年で100年を迎える。立派な歴史的な建造物だ。シャルル・ガルニエのオペラ座に比べると、全体的に空間は小ぶりだ。一応、エントランスの吹抜けにバロック階段的な演出もあるが、さほど壮麗ではない。モダニズムというよりは、古典も入り、ちょっと堅いアールヌーボーの内装などが散見され、興味深い。
2012/05/29(火)(五十嵐太郎)
マックス・エルンスト──フィギュア×スケープ
会期:2012/04/07~2012/06/24
横浜美術館[神奈川県]
なんだろうこの展覧会。別に生誕(あるいは没後)何年という記念展でもないし、今年はドイツ年でもないし、いまなぜエルンストをやらなければならないのか、きっかけが見えない。もちろんそんな外的なきっかけなんかなくたって、学芸員がぜひやりたいと考えていい作品を集めてきたら、むしろそっちのほうが望ましいのだが、その点でもハンパ感が否めない。120点の出品作品のうち油彩画は30点のみで大半は版画。しかも版画は10点のシリーズでも1点と数えるから、実感としてはほとんど版画ばかりで、合間に油彩画がはさまってるという印象だ。出品は国内の美術館所蔵品が大半だが、そのなかで「いい作品」と呼べるのは、大阪市立近代美術館建設準備室の《偶像》と、京都国立近代美術館の《怒れる人々(訴え)》くらい。ほかの「いい作品」は、《期待》がミュンヘンのピナコテーク・デア・モデルネ、《ユークリッド》がヒューストンのメニル・コレクション、《嘘八百》がパリのポンピドゥー・センターといずれも海外の所蔵だ。あれこれイチャモンをつけてきて最後にいうのもなんだが、けっして悪い展覧会ではない。エルンストのすべてを知りたいという人は別にして、作品点数も適度だし、作品内容もバラエティに富んでいるうえ適度に刺激的なので、今日は時間があるからちょっと見に行くかって人にはおあつらえ向きといっていい。
2012/05/30(水)(村田真)
ジェレミー・デラー「Joy in People」
会期:2012/06/01~2012/08/19
WIELS[ベルギー ブリュッセル]
ブリュッセルでは、ビール工場をリノベーションしたアート・スペース、WIELSにて、ジェレミー・デラー展のプレス・レビューに出席した。初期の寝室開放、サッチャー時代の炭坑閉鎖ストライキ、デペッシュ・モードの海外受容をテーマにした作品など、イギリスの社会・文化と人の関係性を軸にさまざまな作品を展開している。WIELSはラフなつくりだが、空間は大きく、またレジデンスのプログラムと設備も充実していた。
2012/05/30(水)(五十嵐太郎)
ニコラス・プロヴォスト「Plot Point Trilogy」
会期:2012/04/22~2012/07/01
ARGOS Centre for Art & Media[ベルギー ブリュッセル]
続いて、その近くのROSASとの所縁が深いダンス・振付けの学校P.A.R.T.S.を訪問し、市内のギャラリーめぐりを行なう。ARGOSも大胆なリノベーション空間で、映像を中心に紹介しているスペースだった。ニコラス・プロヴォスト展は、ニューヨーク、ラスベガス、東京を舞台にした不穏な三部作で強烈なインパクトをもつ。
写真:ARGOS
2012/05/30(水)(五十嵐太郎)