artscapeレビュー
2013年09月15日号のレビュー/プレビュー
高松市美術館開館25周年記念 大竹伸朗展 憶速 SHINRO OHTAKE:OKUSOKU VELOCITY OF MEMORY
会期:2013/07/17~2013/09/01
高松市美術館[香川県]
高松市美術館では、ナチュラルボーン・アーティストの大竹伸朗展「憶速」を開催していた。知らないシリーズも展示され、すべてを作品化していく相変わらずのエネルギーだったが、こちらは島々のにぎわいと違い、人が少ない。やはり、瀬戸内の来場者は、美術を見にくるというより、ホワイトキューブとは異なる体験を求めているかもしれない。
2013/08/19(月)(五十嵐太郎)
瀬戸内国際芸術祭2013 アートと島を巡る瀬戸内海の四季
会期:2013/07/20~2013/09/01
瀬戸内海の12の島+高松・宇野[香川県、岡山県]
直島へ。すごい人気の安藤ミュージアムは、外観は残しつつ、内部にコンクリートの壁を挿入しており、プンタデラドガーナの木造版だった。三分一博志さんの、直島の地域性を考慮した屋根をもち、手動で360度回転する水の上の茶室は体験としても面白い。西沢大良さんのパチンコ屋を改造したギャラリーは、静岡の教会の天井もほうふつさせる。ただ、新作に限定すると、それほど直島でまわるべき作品数は多くない。瀬戸内をまわり、ベタでもメタのレベルでも、建築博物館化の現象が起きていると思う。やはり鍵をにぎっているのは、ベネッセだ。一時的なインスタレーションではなく、建物ごとつくるわけだから、当然、お金はかかるが、世界レベルの高品質で、ちゃんと残るものを確実に蓄積していく。あいちトリエンナーレでも、こういう民間企業の関与があるとよいのだが。
写真上から、《ANDO MUSEUM》、三分一博志、西沢大良
2013/08/20(火)(五十嵐太郎)
パシフィック・リム
会期:2013/08/09
『パシフィック・リム』を見たが凄い。日本の怪獣映画とSFアニメの歴史的遺産をアメリカが実写化している。これは日本映画の予算だとできないだろうが、勝手なアメリカナイズでなく、もとの戦後日本のサブカルチャー文化へのリスペクトも感じる。ここまで監督が好きなことをやりきったら、細かいケチをつけるのは野暮というもの。ただ、爬虫類のようになったハリウッド版のゴジラでもそう思ったのだが、「パシフィック・リム」も、怪獣の造形が着ぐるみ的なものから離れていくのは仕方ないにしても、日本とはだいぶ異なる(エヴァにおける使徒のデザインのようなエッジもない)。日本とアメリカで、どうも怪獣のイメージが違うことは興味深い。
2013/08/20(火)(五十嵐太郎)
生誕250周年 谷文晁
会期:2013/07/03~2013/08/25
サントリー美術館[東京都]
近代以前の日本絵画はパターン化しているからつまらないと思っていたが、この展覧会を見ると、日本絵画のパターンはひとつではなくいくつかあって、谷文晁はそのいくつものパターンを描き分け、折衷してるからおもしろいことがわかった。これは当時、掟破りだっただろう。なにしろ狩野派から土佐派、円山四条派、中国画、洋風画までレパートリーは広く、自由に行き来していたという。いまだと油絵と日本画とスーパーリアリズムとヘタウマをひとりで同時にやっちゃうみたいな。近代以前のポストモダニストですね。
2013/08/21(水)(村田真)
あいちトリエンナーレ2013オープンアーキテクチャー
会期:2013/08/21
愛知産業大学 言語・情報教育センター[愛知県]
岡崎へ。スタジオ・ヴェロシティの愛知産業大学言語・情報共育センターにて、オープンアーキテクチャーが催された。建築家からは細かい設計のプロセスを、愛知産業大学学長・小川英明さんはこの施設の背景や、どう使うか、筆者はトリエンナーレとの関係を語る。オープンアーキテクチャーの企画でよかったのは、名古屋音楽大学のサクソフォーンアンサンブルが演奏したこと。参加者は椅子をもって内外を移動しながら、好きな場所に座る。その結果、愛知作業大学言語・情報共育センターの公園のような空間というコンセプトが明快にあらわれながら、参加者が音楽も楽しむことができた。
その後、シビコ屋上のスタジオ・ヴェロシティによる頭上に白い糸をはりめぐらせたインスタレーションに立ち寄る。時間帯によって全然体験が異なる作品だが、初めて夕方に訪れた。真白に塗られた屋上のあまりの反射光ゆえに、サングラスをかけても5分といられない真昼と違い、長時間の散策が可能だ。前日はビートたけしがNHKの番組収録で訪れ、ヴェロシティと対談し、この空間をいたく気に入ったという。
2013/08/21(水)(五十嵐太郎)