2022年10月01日号
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artscapeレビュー

BankART AIR Program 2011 OPEN STUDIO

2011年07月15日号

会期:2011/06/17~2011/06/26

BankART Studio NYK[神奈川県]

横浜のBankARTのアーティスト・イン・レジデンスのプログラムはかなり面白い。黙々とレース編みを続けているアーティスト(樋口昌美《ド イリ ー》)がいたり、漫画雑誌を「苗床」にしてカイワレ大根を育てていたり(河地貢士《まんが農業》)、ユニークな作品を楽しむことができる。この玉石混淆の雰囲気が、会場に活気をもたらしているように感じるし、50人(組)弱のアーティスト同士もいろいろ刺激を受けるのではないだろうか。
その会場の一角に、BankART Schoolの飯沢ゼミの有志が、「いまゆら(イマ・ユラギ・ツナイデ)」というスペースで参加している。毎週「ポートフォリオを作る」という授業を続けている最中に、「3・11」の大震災が起こったことは、彼らにとっても講師をつとめていた僕にとっても大きな出来事だった。だが、そのことが「反転した日常を写真とポートフォリオで検証する」というテーマの設定につながり、皆の力を集めてクオリティの高い展示を実現することができた。リーダーの若林ちひろさんをはじめとする13人の参加者にとっては得がたい経験だったのではないだろうか。6月18日には震災直後に宮城県太平洋沿岸に入って写真を撮影し、いち早く『hope/TOHOKU』というフォト・ブックをまとめた菱田雄介を迎えて、トークイベントが開催された。これから先、多くの写真家たちが復興の過程を長期戦で粘り強く記録していくと思うが、菱田の仕事はまさにそのスタートラインといえるだろう。
なお、『hope/TOHOKU』は僕の文章とあわせて再編集し、8月に『アフターマス 震災後の写真』(NTT出版)というタイトルで刊行する予定だ。いまその編集作業を進めているのだが、そこでは震災によって見えてきた写真を撮り続けることの意味を、あらためて問い直していきたい。

2011/06/18(土)(飯沢耕太郎)

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