artscapeレビュー
没後10年:三尾公三のまなざし
2011年07月15日号
会期:2011/05/25~2011/06/14
京都造形芸術大学 ギャルリ・オーブ[京都府]
岐阜県美術館からの巡回展。エアブラシを用いた手法による幻想的な作品で時代を風靡した三尾公三(1923~2000)。週刊誌『FOCUS』の表紙絵などで広く知られる作家だが、今展には60年代以降の絵画を中心に、エスキースやデッサンなども展示され、その制作工程もうかがい知ることができる内容となっていた。私はここで初めて知ったのだが三尾がエアブラシを使い始めたのは40歳を過ぎてからのことだという。なんと43歳のときに京都市工業試験所塗装科の夜間部に1年通って吹き付け技法を習得している。大学では日本画を学び、卒業後に洋画表現に転向、その後もセメントを用いた表現などを行なっている。そんな転機の都度、それまで使用していた画材や作品を友人に譲ったり焼却し、ほぼすべてを処分したというエピソードも興味深い。異次元世界に誘うような作品の圧倒的画力もさることながら、美術制作の常識や枠組みを超え、常に表現の可能性を模索する作家の、たゆむことのない制作姿勢や過去を絶つ覚悟にも打たれる思いがした。表現を学ぶ若い学生たちにぜひ見てほしい思った展覧会。
2011/05/25(水)(酒井千穂)