artscapeレビュー
ワシントン・ナショナル・ギャラリー展
2011年07月15日号
会期:2011/06/08~2011/09/05
国立新美術館[東京都]
ロシアを含めた欧州の美術館が軒並み作品の貸し出しを渋るなか、印象派コレクションをポンと貸し出すとは、さすがアメリカは太っ腹。ま、それだけ放射能に関して正確な情報をつかんでるんでしょうね、日本以上に。そっちのほうがコワイな。で、やってきたのはコローからロートレックまで計83点。バルビゾン派やブーダンののどかな風景画に続き、マネの《オペラ座の仮面舞踏会》で目が洗われる。小品だが、近代的都市生活を描いた主題といい、黒を基調とした色彩といい、白い床と柱で画面を枠どる構図といい、まさにモダン絵画。さらに《鉄道》《プラム酒》と続き、ここが最初のピーク。だとすれば、中盤のピークはやはりモネ。なかでも《日傘の女性、モネ夫人と息子》は本当に輝くような明るさだ。版画や水彩をはさんで、終盤はセザンヌ、スーラ、ゴッホらが目白押しだが、1点あげるとすればセザンヌの《赤いチョッキの少年》。いつまで見ていても見飽きることがない。ほかにもバジールやカイユボットらあまり紹介される機会の少ない画家や、メアリー・カサット、ベルト・モリゾら女性画家も何点かずつ出ていて満足度は高い。試みに、1999年に開かれた「ワシントン・ナショナル・ギャラリー展」のカタログを引っぱり出してみると、印象派を中心に出品数も85点とほぼ同じで、ざっと数えてみたら20点以上が重なっていた。99年のほうは版画や水彩がないかわりに、ティツィアーノやフェルメールなどの古典絵画と、マティス、ピカソら20世紀絵画が含まれていて、今回よりお得感があるなあ。
2011/06/17(金)(村田真)