artscapeレビュー
東北大学五十嵐研究室学生編集『ねもは』2号
2011年07月15日号
発行日:2011年6月
文学フリマにあわせて、五十嵐研の学生らによる建築同人誌『ねもは』2号が完成した。完全版ではないとはいえ、300ページ以上のヴォリュームで500円。特集は、建築コンペやプレゼンテーションであり、分厚い資料編は、90年代の『建築思潮』を思い出す。加茂井新蔵の挑発的なアイデア・コンペ/擬似建築論(相変わらず読みにくい)、服部一晃のSANAA人間論、ゼロ年代シーンを歴史的に論じる市川紘司など、20代半ばによる論考を収録している。コンペ有名人のアンケートやインタビューも、20代の新人を強く意識した内容だ。震災によって東北大の研究室が使えず、図書館もろくに入れない状況で、よくこれだけの密度が濃い雑誌を制作できたものだと感心する(筆者の知るかぎり、被災しなかったエリアの建築系同人誌で、これより言説が充実したものは刊行されていない)。
『ねもは』1号からも設計思想が変更・発展し、『エディフィカーレ』を超え、『ラウンド・アバウト・ジャーナル』以来の最大の衝撃だ。これは歴史に残る。建築に閉じているという批判がいかにも出そうだが、社会に惑わされず、まずは建築を考えてよいと思う。
2011/06/11(土)(五十嵐太郎)