artscapeレビュー
風穴 もうひとつのコンセプチュアリズム、アジアから
2011年07月15日号
会期:2011/03/08~2011/06/05
国立国際美術館[大阪府]
欧米中心的な文脈で成立してきたコンセプチュアル・アートに異なる角度からアプローチしようと、「アジア」という切り口で9組のアーティストの活動が紹介された展覧会。木村友紀、contact Gonzo 、プレイ、島袋道浩、立花文穂ら日本の作家のほか、タイのアラヤー・ラートチャムルーンスック、ベトナムのディン・Q・レー、中国の邱志傑(チウ・ジージェ)、韓国のヤン・ヘギュが出品。それぞれの作品が孕む批評性や、問いかけの解りやすさもさることながら、日常とかけ離れていない題材やモチーフが多いせいか、多かれ少なかれどの作品にもどこかユルい雰囲気があって単純に楽しい。特にチェンマイ郊外の村人達が戸外でマネの《草上の昼食》やミレーの《落穂拾い》の「複製」を鑑賞する様子を撮影した、アラヤー・ラートチャムルーンスックの三つのビデオ作品は、勝手気ままに繰り広げられる村人たちの会話がじつに愉快で見飽きない。今展の「風穴」というタイトルにもイメージが重なる爽快な風を感じる作品だった。
2011/06/05(日)(酒井千穂)