artscapeレビュー
空想動物の世界──聖なる古代の物語展
2012年08月15日号
会期:2012/07/07~2012/08/19
MIHO MUSEUM[滋賀県]
古来、人間は、角や牙のある野獣や翼と鉤爪を持つ猛禽などの存在に、神の力や、抗しがたい自然現象のイメージをつなげてきた。本展は、いにしえの人々がつくり出した人間や動物を組み合わせた「空想動物」の造形作品を集めたもので、西アジアや南アジアの神々、ギリシャ神話の世界、中国の空想動物など、さまざまな地域、時代の文化と信仰をベースに、空想動物をあしらった杯や皿、印章、イヤリング、壁画、建築装飾、絨毯など、さまざまな道具や装飾が展示、紹介されていた。有翼でひづめをもつ神霊や角をもつ怪物、神と人間とのあいだとされる精霊など、デザインやモチーフ自体もさることながら、それにまつわる物語や伝説も解説も興味深い。ヒンドゥー教と仏教のつながり、神像のまつり方、表現の仕方でそれらの信仰の違いがわかるなど、展示資料と解説を見合わせるとより面白い。自然と神々の存在に畏怖する人間の想像力にも感動。次に開催される秋季特別展「土偶・コスモス」展(2012年9月1日~12月9日)も面白そう。
2012/07/06(金)(酒井千穂)