artscapeレビュー

BankART AIR PROGRAM OPEN STUDIO 2012

2012年08月15日号

会期:2012/07/06~2012/07/16

BankARTスタジオNYK[神奈川県]

BankARTで行なわれたレジデンス・プログラムの2カ月間の成果を発表。個展のための作品制作の場として借りる者もいれば、多くの美術関係者との交流を目的に入居した人もいるし、ただ大きな作品をつくりたいから大きな空間を借りたという人もいる。注目したのは洗川寿華、幸田千依、清水総二の絵画。だが、このコンクリートに囲まれた空間、2カ月という期間をもっとも有効に作品化したのはPinpin Coのプロジェクトだ。彼女は公募で集めた40人を毎日ひとりずつこのスタジオに招き、その顔に刺青のようなパターンを描き、コンクリート壁を背景に写真を撮り、撮影した同じ壁にその写真を展示するというもの。その行為は人間の原初的な表現行為にまで思いをさかのぼらせるし(刺青は洞窟壁画よりも古い人類最初の絵といわれている)、またそれらの写真はその場所でしか意味をもたないサイトスペシフィックな写真となっている。この場所で、この期間で見事に完結したプロジェクト。ちなみにPinpin Co(なんて読むのか、ピンピンコ?)は中国出身で、早大と芸大で建築を学んだという異色の経歴。これからの活動に注目したい。

2012/07/06(金)(村田真)

2012年08月15日号の
artscapeレビュー