2019年09月15日号
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artscapeレビュー

「TOPOPHILIA」由良環

2012年08月15日号

会期:2012/07/18~2012/07/31

銀座ニコンサロン[東京都]

とても生真面目な労作である。由良環は、2005年から「世界の10都市を同じ方法論で撮る」というプロジェクトを開始した。都市を取り囲む環状線(環状道路、鉄道、城壁など)を基準に、そこから都市の中心に向けて撮影していく。滞在中の25日間に25地点を選び、1日1枚それぞれ「日の出から1時間後、日の入りの1時間前」にシャッターを切る。カメラは地面から1.6メートルの高さに縦位置で構える。4×5インチ判のフィールドカメラで、フィルムはモノクロームのコダックTXP。レンズは150ミリ(標準レンズ)で、絞りはf45に固定されている。
このように厳密にコンセプトを定め、その後、粘り強く丁寧に撮影が続けられていった。その成果が銀座ニコンサロンの個展で披露されたわけだ(同名の写真集がコスモスインターナショナルから刊行)。先に書いたように、文句のつけようのない労作なのだが、作品を見ていてあまり心が弾んでこない。金川晋吾の「father」とはその点で対象的で、一見同じような写真が並んでいるように見える金川の仕事が、さまざまなイマジネーションの広がりをもたらすのと比較して、まったく異なる表情をみせてくれるはずの「TOPOPHILIA」の連作には、なぜか閉塞感が漂っているのだ。
おそらく、「方法論」の設定の仕方に、いくつかのボタンの掛け違いがあったのではないだろうか。4×5判のカメラで撮影したモノクロームの端正なプリントが並ぶと、むしろそれぞれの都市の違いが判別しにくくなる。また東京、パリ、ベルリン、ニューヨーク、北京、ニューデリー、イスタンブール、ローマ、ロンドン、モスクワという10都市の選択も、紋切り型で、あらかじめイメージを限定しかねない。ただ長期間、さまざまな都市で過ごした時間の蓄積は、今後の由良の活動に、有形無形のいい影響を及ぼしていくはずだ。今度はよりフレキシブルなアプローチで、写真による都市の「TOPOPHILIA」の再構築を試みてほしいものだ。

2012/07/18(水)(飯沢耕太郎)

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