artscapeレビュー

この空の花──長岡花火物語

2012年08月15日号

『この空の花』は忘れ難いヘンな映画である。大林宣彦の個性というべき不自然な演出とセンチメンタリズムが満載ながら、徹底したリサーチをもとに、3.11から日本近代の戦争史、そして新潟の地震、あるいは長岡、東北、天草、長崎、広島、中国、シベリア、ハワイを横断する奇蹟のような時空の旅だ。強烈な作家性と、史実を想像によってつなぐ物語の力がある。渋谷のアップリンクで見たのだが、大林宣彦監督も小さな会場で一緒に見ていて、上映後にトークが行われた。かつて軍国少年だった彼が、その後、平和なニッポンを享受し、長岡の花火と3.11と遭遇してつくられた作品だとわかる。

2012/07/14(土)(五十嵐太郎)

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