artscapeレビュー
「具体」──ニッポンの前衛 18年の軌跡
2012年08月15日号
会期:2012/07/04~2012/09/10
国立新美術館[東京都]
なんでいま「具体」なのか? こじつければ今年は解散40周年に当たるが、結成◯周年というのはあっても解散◯周年を記念する展覧会はあまり聞いたことがない。それに、具体美術協会は関西を拠点とする前衛芸術グループなのに、今回は東京だけの単独開催ときた。時も場所も唐突感は否めないが、だから意味がないのではなく、だから意義深いのだ。まず、ここ数年のあいだに戦後日本の現代美術が世界的に再評価されてきたという背景がある。いま「もの派展」がアメリカを巡回しているし、具体も来年グッゲンハイム美術館で回顧展が計画されているという。その前に、本格的な紹介がされていなかった東京で大規模な展覧会が開かれるのは、まさに時宜にかなったものといえるだろう。しかも具体の回顧展といえば、結成から解散までの18年の活動のなかでも最初期の(いまでいう)インスタレーションやパフォーマンスばかりが注目され、その後のフランスから刺激を受けたアンフォルメル絵画や、大阪万博に向けて盛り上がったテクノロジーアート系の作品は等閑視されてきた。今回はその全期間に焦点を当てた画期的なものなのだ。もっとも全期間に焦点を当てれば総花的になりやすく、結果的にどこにも焦点を当てないのと同じで、全体に平坦に見えてしまいがちだ。実際、会場を一巡して感じた「寒さ」は、かつて熱かったはずの作品が、まるで標本のように整理整頓されて並べられていることの違和感に由来するだろう。とりわけそれが時代を切り開いた最前衛であればあるほど、その落差も大きくなる。前衛芸術の回顧展はことほどさように難しい。
2012/07/03(火)(村田真)