artscapeレビュー
MEDIA ARTS SUMMER FESTIVAL 2012
2012年08月15日号
会期:2012/07/13~2012/07/15
ICC (Intercross Creative Center)[北海道]
ICC (Intercross Creative Center)は札幌市豊平区に「様々な業種のクリエイターとそれをサポートするビジネスが集まるハイブリッド施設」として2001年に設立された。メディア・アートの振興を中心に活動してきたのだが、NPO法人、S-AIRが主宰するアーティスト・イン・レジデンスの活動も、その大きな柱となっている。
今回の「MEDIA ARTS SUMMER FESTIVAL 2012」は、アーティスト・イン・レジデンスで滞在していたベトナムの映像作家、ファム・ゴック・ランとインドの写真家、ロニー・センの帰国にあわせて企画されたもので、写真、映像、音楽、インスタレーションなど、さまざまなジャンルにまたがる30名以上のアーティストたちが参加している。また、7月15日には「映像・メディアサミット」と「写真家サミット」の2つのシンポジウムが開催され、僕はそのうち「写真家サミット」に、札幌在住の写真家、小室治夫、今義典、露口啓二、山本顕史とともにパネラーとして参加した。
この種のメディア・アートの展示に写真家たちが参加することも、いつのまにか当たり前になってしまった。デジタル化以後、写真家が動画やインスタレーションを含めた展示を試みたり、映像作家が静止画像を取り入れたりするのも目につく。ジャンルの混淆が進むことはむしろ歓迎すべきことだが、逆にそれぞれの領域の固有性が、うまく発揮しにくくなっているのではないだろうか。今回も倉石信乃のテキストと写真とを巧みに組み合わせた露口や、撮影済みのフィルムを光に曝すというインスタレーションを試みた山本など、面白い作品もあったのだが、準備期間が短かったこともあって、水と油的なぎこちなさがつきまとっているようにも感じた。
残念ながら、現在ICCが使用している元教員研修センターだったという建物は、来年3月で閉じられることになるのだという。ICCの活動そのものはそれ以降も別な場所で継続するということなので、また意欲的な展示企画を実現してほしい。
2012/07/15(日)(飯沢耕太郎)