2019年09月15日号
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artscapeレビュー

本城直季「diorama」

2012年08月15日号

会期:2012/06/05~2012/08/05

写大ギャラリー[東京都]

本城直季は東京工芸大学芸術学部写真学科の出身(2004年に大学院芸術研究メディアアート科修了)だから、同大学の中野キャンパス内にある写大ギャラリーでの個展は、いわば凱旋展ということになる。こういう展示は本人にとってはとても嬉しいものだろう。多くの後輩たちが見にくるわけだから、いつもにも増して力が入るのではないだろうか。代表作であり、2006年に第32回木村伊兵衛写真賞を受賞した「small planet」に加えて、今回は新作を含む「Light House」(2002年/2011年)のシリーズも展示していた。
本城のトレードマークと言えるのは、言うまでもなく「small planet」で用いた、4×5インチの大判ビューカメラの「アオリ」機能を活かして画像の一部にのみピントを合わせ、あとはぼかす手法だ。これによって得られる、まさにジオラマ的としか言いようのない視覚的効果は、何度見てもめざましいものだ。本城は撮影するポイントを厳密に定め、被写体をきちんと選択することで、見る者に驚きを与えつづけることに成功した。
すでに完成の域に達している「small planet」と比較すると、「Light House」はまだ試行錯誤の段階にあるように見える。自然光で上から見おろす視点の前者に対して、夜の人工光に照らし出された街の一角を水平方向から精密な模型のような雰囲気で写しとる後者は、どちらかと言えば凡庸な描写に思えてしまうのだ。本城は東京、千葉など首都圏近郊の眺めにこだわっているようだが、むしろ被写体となる地域の幅を広げた方が面白くなりそうな気がする。地方都市や外国の街にまで視野におさめていけば、より「映画のセットのような」雰囲気が強まるのではないだろうか。次の展開に期待したい。

2012/07/11(水)(飯沢耕太郎)

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