artscapeレビュー

2011年08月15日号のレビュー/プレビュー

バンコクサマー2デイズ──タムくんの似顔絵屋さん

会期:2011/07/05~2011/07/06

flowing KARASUMA[京都府]

アニメーション制作や音楽活動も行なっているバンコク在住の漫画家、ウィスット・ポンニミット(通称タムくん)が来日。参加者の似顔絵(全身)を対面で描く「似顔絵屋さん」と、アニメーション上映&ライブという2日間のイベントが京都で開催され、1日目の「似顔絵屋さん」に参加した。会場では、机の上でさらさらとペンを走らせ、あっという間に似顔絵を完成させるタムくんの手元がプロジェクターで映し出されていたのだが、完成したそれぞれの似顔絵の画像も随時twitterで公開されていた。ちなみにタムくんはその日63名の似顔絵を描いていたと、あとで知って吃驚。だけど、かわいらしく描かれている(サービスか?)顔の表情は特徴をよくとらえていて巧い似顔絵。一緒した友人と互いに見せ合う楽しさも、実際に対面で描いてもらった高揚感も幸福な気持ちになるひとときだった。

2011/07/05(火)(酒井千穂)

オーストラリア建築史大会エクスカーション・ツアー

会期:2011/07/06

[オーストラリア・ゴールド・コースト]

オーストラリアの建築史の大会が企画したエクスカーション・ツアーに参加し、ゴールド・コーストを見学。日本とは逆に人口が増えており、イケイケの建設状況である。超高層のスカイポイントの展望台から街を眺めると、シカゴのように、ビルの影が海面に写り込む。過去に津波はなかったのだろうが、311後に見ると、まったく堤防がない親水性あふれる街が無防備に見えてしまう。それにしても、サーファーズ・パラダイスという名前がすでにそうであるように、多幸感にあふれる街だ。季節は冬だが、ちょうど過ごしやすい。

2011/07/06(水)(五十嵐太郎)

SAHANZ建築史大会

会期:2011/07/07

[オーストラリア・ブリスベン]

ブリスベンのSAHANZの大会にて、キーノート・レクチャーを行なう。テーマは、日本における歴史家と批評家と建築家の関係について。戦前の日本の言説では、中国的なものを排除することで純粋日本建築が得られると執拗に語っていたが、オーストラリアとニュージーランドも、イギリスとの関係でアイデンティティの問題が出るという。すなわち、親であるイギリスからの文化的な自立をどう考えるかである。

2011/07/07(木)(五十嵐太郎)

アートアワードトーキョー丸の内2011

会期:2011/07/03~2011/07/31

行幸地下ギャラリー[東京都]

全国の美大卒業・修了制作展から選抜した新人アーティスト30人の展示。ずいぶん大学に偏りがあるなあ、というのが第一印象。数えてみると、東京藝大10人、京都市立芸大と京都造形芸大が各5人。この3校で全体の3分の2を占め、あとの8校は1人か2人しか選ばれていない。選択する側にこれらの大学のセンセーもいるんだろうね。一番すばらしかったのは、小山真徳(東京藝大)の《わたしの荒野》と題するインスタレーション。作者らしきマネキンを中心に、全国の土産品を並べた棚や机を置き、数点の絵を飾っている。おそらく作者は各地を巡りながら絵の修行をしているという設定だろうが、注目したいのはそれらの絵が高橋由一に由来しているということだ。日本のヴァナキュラーな風土で絵を描き続ける自分を、近代以前の日本に西洋の油絵を接続するため悪戦苦闘した由一にダブらせようとしたのかもしれない。これはグランプリで文句なし。あとは、装飾的な室内風景を描いた大久保如彌(武蔵野美大)の具象画と、明彩色で筆跡を残しながら描いていった山本理恵子(京都市立芸大)の抽象画。大久保の作品には一見マティスやヴュイヤールにも通じるアンチームな空気が漂い、つい見過ごしてしまいがちだが、静かな狂気のようなものが感じられ、そこに共感がもてる。山本は完成されたイメージを持たずにどんどん描いていき、結果的に「室内風景」のイメージが立ち現われたのだそうだ。こちらは高橋明也賞を受賞。さきにふたりを具象画と抽象画に分けたが、図らずも両者とも「室内風景」に行きついたのが興味深い。

2011/07/07(木)(村田真)

クイーンズランド州立美術館

[オーストラリア]

大会における戦後日本建築のセッションが終わった後、飯田志保子さんにクイーンズランド州立美術館を案内していただく。アジア圏の現代美術の収集に力を入れており、1993年以降のトリエンナーレのたびに全作品を購入している。これまでのコレクションだけでも相当な企画展ができるほど、量が多いという。また映像の分野も充実している。建築はジャン・ヌーヴェルのルツェルンの文化センター風だが、内部に街路感覚のストリートを十字に取り込む。これは隣接するほかの文化施設とつながっており、都市計画と連動したデザインである。

2011/07/08(金)(五十嵐太郎)

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