artscapeレビュー

2011年08月15日号のレビュー/プレビュー

トランスフォーマー3

IMAX Theatre[オーストラリア]

imaxの映画館で『トランスフォーマー3』を鑑賞。クライマックスとなるシカゴの破壊シーンはすさまじい。3DのCGを見せるために、最後は呆れるくらい、長時間にわたって戦闘の場面が続く。主人公とガールフレンドがこれだけサバイバルして、たいした怪我をしないとは、リアルの設定が違う。修羅場は複数の登場人物に割り当てたほうが納得できる。脚本のバランスは悪い。CGの廃墟もよくデザインされているが、やはり本物の廃墟の方が圧倒的に複雑で無様であり、それゆえにときには驚くべき風景が生まれる。

2011/07/08(金)(五十嵐太郎)

クイーンズランド大学

[オーストラリア]

船で川を移動し、ブリスベンのクイーンズランド大学を見学する。キャンパスにある建築群は、あらゆる開口部に庇、ルーバー、ブリーズ・ソレイユなど、デザイン・カタログというくらいに、さまざまなバリエーションが展開し、夏の日光を遮る影の装置が、建築におけるオーストラリア的なものではないかと気づく。実際、街の様式建築も、ベランダを追加したものだった。こうした地域的なデザインの手法は、沖縄と似ている。

2011/07/09(土)(五十嵐太郎)

森山大道「オン・ザ・ロード」

会期:2011/06/28~2011/09/19

国立国際美術館[大阪府]

森山大道のような長いキャリアと高い知名度のアーティストの回顧展を開催する時には、大きく分けて二つのやり方があると思う。ひとつは順を追って、クロノジカルに代表作を並べていくオーソドックスな展示、もうひとつはむしろ積極的に作家の作品世界を解体=構築し、新たな解釈を打ち出していくやり方だ。前者は無難だが見慣れた眺めを見せられるだけになりがちだし、後者はその作家をずっとフォローしている観客にとっては新鮮味があるが、初めて見る者にとっては混乱をもたらすことになる。つまりどちらも一長一短があるわけで、両方の可能性をバランスよく追求していくキュレーションが必要になるということだ。
今回の森山大道展に関していえば、そのバランスがかなりうまくいっているように感じた。観客はまず「東京」と題する、大伸ばしのデジタル・カラープリントがぎっしりと隙間なく並ぶ部屋に導かれる。このシリーズは森山の最新作であり、いきなりこの写真家の表現の生々しい「現在形」が突きつけられるのだ。さらに「ブエノスアイレス ハワイ 記録」「新宿」と2000年代以降の作品が並ぶ部屋が続く。照明は暗く落とされ、作品の一点一点がスポットライトに照らし出されて白熱した光を発しているように見える。そしてそこから先はやや小さく区切られたスペースに、1968年のデビュー写真集『にっぽん劇場写真帖』から始まって、『狩人』『写真よさようなら』『遠野物語』『続にっぽん劇場写真帖』『光と影』『仲治への旅』『サン・ルゥへの手紙』『Daido hysteric』『COLOR』と主要な写真集の掲載作が並んでいる。つまり、現在の森山大道の写真家としての営みをクローズアップして見せるパートと、クロノジカルに表現の変化を追うパートとを組み合わせることで、この写真家に特有の「路上」における眼差しや身振りのあり方が、立体的に浮かび上がってくるように仕組まれているのだ。
強く感じたのは、森山の写真が与えてくれる「そこに何ものかが生成しつつある」という独特のドライブ感である。どの写真を見ても、画面のあらゆる細部から、震え、うごめき、うねり、伸び縮みする生命力の波動が伝わってくる。そのアニミスム的なエネルギーの放出のあり方は1960年代の初期作品でも、最新作の「東京」シリーズでもまったく変わらない。「路上」は彼にとって、あらゆる生命の母胎となる大いなる混沌なのだ。

2011/07/10(日)(飯沢耕太郎)

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「ラファエル前派からウィリアム・モリスへ」展

会期:2011/06/04~2011/07/14

目黒区美術館[東京都]

アーツ・アンド・クラフト運動になだれ込むイギリスの19世紀の動向は、学部時代に高階秀爾先生の美術史の講義を熱心に聞いていたことを思いだす。同展では、絵画だけではなく、フィリップ・ウェブやモリス商会の家具、ステンドグラス、室内装飾も展示されており、植物が重要な装飾のパターンとなった美術と建築の関係を楽しめる。

2011/07/10(日)(五十嵐太郎)

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没後100年:青木繁 展──よみがえる神話と芸術

会期:2011/05/27~2011/07/10

京都国立近代美術館[京都府]

1911年、28歳で亡くなった青木繁の没後100年を記念して開催された関西で初めての回顧展。国の重要文化財に指定されている代表作《海の幸》や《わだつみのいろこの宮》はよく知られているが、今展では油彩画約70点、水彩、素描のほか、友人である坂本繁二郎に宛てた手紙やスケッチ旅行の記録なども展示された。会場には《わだつみのいろこの宮》の制作に至るまでの、日本神話を題材にした作品群も並んでいたが、それらからはラファエル前派やエドワード・バーン=ジョーンズなど、英国ロマン主義からの影響も面白いほどにうかがえる。同時に、若い青木の興味と関心の幅広さ、みなぎるような制作への情熱も圧倒的に感じられて特に印象に残った。表現や生活、健康面での焦燥感などの苦悩も含め、青木繁という作家の実像とその時代を浮かび上がらせるとても充実した展覧会だった。

2011/07/10(日)(酒井千穂)

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