artscapeレビュー

2011年10月15日号のレビュー/プレビュー

國盛麻衣佳「be with underground」

会期:2011/08/29~2011/09/03

GGJ[東京都]

國盛は石炭を画材にして絵を描いたり(コール・ペイント)、オリジナルの石炭チョークを用いて「山本作兵衛なりきりワークショップ」を開いたり、とにかく炭鉱をテーマに作品づくりをしている珍しいコ。そのカワイイ容姿と重厚長大なモチーフとのギャップが感動的だが、出身が炭鉱の街として知られる福岡県大牟田市と聞けばなるほど。今回は石炭から灰色、濃灰色、茶色、黒の4色をつくり、にかわで溶いて、炭鉱の廃屋からはずした天井板やセラミックの上に人物を描いている。モデルは炭鉱地ゆかりのおじいちゃんやおばあちゃん。素材も色彩もモチーフもけっして新しくも美しくもないが、こんなことやってるヤツはほかにいないという点で高く評価したい。炭鉱への愛がヒシヒシと伝わってくる。ギャラリーには廃屋の一部が再現され、畳の上でワークショップやトークも行なったという。

2011/09/02(金)(村田真)

浅葉雅子「MAN MADE」

会期:2011/08/29~2011/09/03

コバヤシ画廊[東京都]

菱田春草の日本画をベースに、背景の色や葉のパターンをモダンなデザインに変えた作品。マンガチックなリスや小鳥を配したり、木の輪郭線に糸を使うなど遊び心も見られる。作者には日本画への強いこだわりが感じられるが、それが日本画(または春草)に対する共感なのか反発なのかが見きわめられない。おそらく愛憎なかばするのだろう。そこが曖昧だ。

2011/09/02(金)(村田真)

黒崎香織「SOMETHING TO SEE」

会期:2011/09/01~2011/09/28

INAXギャラリー2[東京都]

へらへらの半紙を縦横2メートル前後につないだ大きな画面に、クレパスでガシガシ描いている。まずその脆弱な物質感とは裏腹のずっしりしたマチエールが特異だ。描かれているのは、食卓の風景をおおい尽くさんばかりの蛾の図であったり、教室内の風景の真ん中に窓の外の風景を鎮座させていたり。モチーフもかなり特異だ。なぜ蛾なのかといえば「とても怖かった」から。「あまりに怖すぎるので克服しようと」思って描くようになったんだそうだ。「好きだから描きました」みたいなどうでもいい絵がはびこる昨今、黒崎の絵のもつインパクトは貴重だ。

2011/09/02(金)(村田真)

UNDER35:奥村昂子 展

会期:2011/09/02~2011/09/14

新・港村UNDER35ギャラリー[神奈川県]

35歳以下の有望なアーティストに発表の場を与える試み。新・港村は広いので、壁さえ建てればいくらでもギャラリーがつくれるのだ。今回はコンペで選ばれた奥村さんの展示。彼女は、独断でいわせてもらえば、幽霊みたいなものをつくる人。出入り口に細工して、ギャラリー内を空っぽにしたり、大地から屹立するのではなく、重力に従って垂れ下がる彫刻をつくったり。今回は動くものを含めて3~4点が展示されていたが、覚えているのは三角形のチーズ型のオブジェだけ。なんでこんな場違いなものを置いたのか理解に苦しんだので覚えているのだが、ふと目を上げると、そこに三角形の出入り口があった。このギャラリー、天井のないホワイトキューブだが、床に接するひとつの角を斜めにカットして出入り口にしている(その正反対の角も三角形に切り取られている)。場違いなチーズは、ひょっとしたらこの三角形に由来するのではないか。外でつくった作品を持ってきてただ置いただけに見せかけながら、じつはその場から発想されたその場ならではの作品だったのだ。これは旧作を運び込んだだけのアーティストが多かった今回のヨコトリへの強烈なアンチテーゼではないかとも思ったが、それはぼくの思い込み。

2011/09/02(金)(村田真)

北仲スクール都市デザイン系ワークショップ「横浜ハーバーシティ・スタディーズ」最終講評会

会期:2011/09/02

北仲スクール[神奈川県]

北仲スクールの「横浜ハーバーシティ・スタディーズ」の公開講評会にゲストクリティックとして参加した。今回は藤村龍至が課題を設定し、昨年試みた海市2.0の手法を改良し、実験的なワークショップ仕様としてバージョンアップしている。今回は架空の場所ではなく、山下埠頭という具体的な敷地が設定され、内容の評価がしやすくなった。ポイントは、あえて1/1,000のみとし、建築の細部に入らせず、都市を考えさせること。ひとりを除き、学生チームを毎日シャッフルする手法は、ワールドカフェのワークショップ版といえる。各段階のプロセスを模型として定着させる行為は、多数の主体がせめぎあう都市の径年変化を凝縮したかのようだ。

2011/09/02(金)(五十嵐太郎)

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