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2011年10月15日号のレビュー/プレビュー

メタボリズムの未来都市

会期:2011/09/17~2012/01/15

森美術館[東京都]

メタボリズムとは1960年に菊竹清訓、黒川紀章、槇文彦、榮久庵憲司ら建築家やデザイナーによって提案された理論で、要約すれば、建築・都市は新陳代謝を通じて成長・変化していく有機体でなければならないという説。しかし無機物のかたまりである建築を成長・変化させていかなければならないというのだから、根本的に無理がある。そのため荒唐無稽な未来が信じられていた時代には夢物語として話題を集めたものの、万博あたりを境に忘れられていった。たしかに建築が成長・変化していくのは不自然だが、しかし建築の集合体である都市は有機体のように成長・変化していかなければならない、というのは感覚的によくわかる。だから、メタボリズムに先行する丹下健三を含め、彼らの多くはひとつの建築としてではなく、都市レベルでのツリー状の集合建築を設計したのかもしれない。このような有機体としての都市という理念は、ある種の不気味さをともなうのも事実だが、3.11以降見直す価値が出てきたのではないか。震災によって会期がずれ込んだが、それだけに重要性を増した展覧会といえる。

2011/09/16(金)(村田真)

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MAMプロジェクト015「ツァン・キンワー」

会期:2011/09/17~2012/01/15

森美術館[東京都]

暗い壁の下のほうから生と死をめぐるセンテンスが少しずつ上昇し、ピンボケになって消えていく。徐々にセンテンスが増えて壁が明るくなり、やがて文字がバラけて花びらのように(言の葉のように、というべきか)舞う。ここらへんは感動的。最後は文字が大きくなってフェイドアウトしていくという映像インスタレーション。日本語と英語の2ヴァージョンあるが、いずれも言葉の意味より視覚効果が勝っている。

2011/09/16(金)(村田真)

トゥクラール&タグラ「Science, Mystery & Magic」

会期:2011/09/03~2011/09/24

東京画廊[東京都]

コンドームのイラスト入りのサンダルや下着を描いた絵画が、バラの花の壁紙を貼った壁面に展示されている。バラの花にはよく見ると男女の足が生えている。なんだろうこれ。絵の下には「クラーク・ケント」「ロイス・レーン」「ブルース・ウェイン」など、どこかで聞いた名前(英語)が読みとれる。別の壁にはスーパーマンやバットマンが勢ぞろいした絵が……。作者はインドの若手アーティスト・デュオ。アメリカのポップカルチャーを揶揄したインディアン・ポップとでも呼ぶべきものかと思ったが、じつはこれエイズ撲滅キャンペーンの一環だという。なんでスーパーマンやバットマンがエイズ撲滅につながるのかというと、彼らの着ているスーツが体にぴったり密着していることから、コンドームの比喩として見られるからだって。そうか、彼らはコンドームを装着した男根の象徴だったんだ。

2011/09/16(金)(村田真)

小畑多丘「BBOYIZM」

会期:2011/09/07~2011/09/20

銀座三越8階ギャラリー[東京都]

技法でいえば木彫による人物像だが、そのアクロバティックなポーズといいケバい色彩といいまったく木彫には見えない。ブレイクダンスなのか、カラフルなファッションに身を包んだ若者が手足を奇妙に曲げて立ち、両目からは遮光器のような数十センチもの板が水平に伸びている。まるでアニメから抜け出たようなキャラクターと、木彫という伝統的な素材・技法のギャップが最大の見どころかもしれない。

2011/09/16(金)(村田真)

八木貴史「Strangler fig」

会期:2011/09/13~2011/10/08

メグミオギタギャラリー[東京都]

数十~数百本の色鉛筆を樹脂で固めて原木に見立て、そこから燭台やシャンデリアのかたちを彫り出したもの。表面に肌色の鉛筆本体と色とりどりの芯が浮き上がってカワキモキレイ。色鉛筆はそもそも絵を描く道具だが、それをムリヤリ彫刻の素材にしてしまう荒技に、なにか絵画が彫刻にレイプでもされてるような強引さを感じてしまう。燭台って男根的だし。

2011/09/16(金)(村田真)

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