artscapeレビュー
2013年05月15日号のレビュー/プレビュー
若沖が来てくれました─プライスコレクション江戸絵画の美と生命─
会期:2013/03/01~2013/05/06
仙台市博物館[宮城県]
仙台市博物館「若冲が来てくれました」展へ。前評判通り。見せ方というか、表題の付け方を変えるだけで、だいぶわかりやすく印象が変わる。例えば、有名な若冲の「鳥獣花木図屏風」は「花も木も動物もみんな生きている」に。絵そのものは変わっていないが、言葉のフィルターの大きさを感じる。
2013/04/17(水)(五十嵐太郎)
ハジメテン「ハジメテン庫──ビッチビチストレージ!」
会期:2013/04/05~2013/05/06
ナディッフギャラリー[東京都]
イテテ、先週ぎっくり腰を患ってしまい、展覧会を見に行くのは久しぶり。ハジメテンは梅佳代、金氏徹平、小橋陽介らおもに関西ベースの8人のアーティストたちが、個々の活動のかたわら時おり集まって「ハジメテ」のことをしていくユニット、らしい。地下のギャラリーに降りて行くと、いろんなガラクタ類がところ狭しと置いてある。どんな小道具で使ったんやっていう発泡スチロール製の岩山、なぜかパン(これもハリボテで、食パン、バゲット、クロワッサンと多種類そろってる)、それにハリボテの大仏の頭と胴体。おそらくデカすぎて入んなかったから上下分けての展示になったんだろう。いや展示とはいわないな、とりあえずビッシリ詰め込んであり、足の踏み場もないほど。考えてみればこのギャラリー、最初のChim↑Pom展のときからモノを詰め込む展示が多い。地下空間で比較的容積が小さいせいか、物量攻めでそれなりに満足感が得られるからかもしれない。
2013/04/18(木)(村田真)
サイドコア──身体/媒体/グラフィティ
会期:2013/03/23~2013/04/21
テラトリア[東京都]
大山エンリコイサム、竹内公太、ニコラ・ビュフといった名前に釣られて行ってみた。会場のテラトリアは、天王洲アイルの寺田倉庫本社内にできたクリエイティブスペースで、なぜかグラフィティ系の展示を中心にやっていくらしい。今回は身体とメディアの関係に意識的なアーティストたちの作品を選んでいるが、計15人のうちホンモノのグラフィティライターはひとりしかいないという。そのライター(QP)は今回グラフィティではなく、新宿の写真をコラージュした壁面作品を制作。完成度は高くないが、メッセージは明確に伝わってくる。隣の大山はグラフィティのストロークからエッセンスを抽出した絵画、その隣の松岡亮は大山作品に色づけしたみたいなステラを思わせる抽象画を出品。ニコラはキリンのすべり台とシーソーに落書きした一見カワイイ、しかしよく見るとすべり台がギロチンになっているという作品、菊地良太は橋の下にヒモを吊るしてブランコする記録写真、竹内公太はネットで自分のことを検索(「エゴサーチ」というらしい)して出て来た画像(男が頭にコーラを載せて歩いてる!)を描いた油彩画を出している。おもしろいなあ。広報もあまりしてないようだし、場所が場所だけに見に行く人が限られるのが残念だけど、いっそ寺田倉庫の壁にドーンと描いたら話題になるかも。
2013/04/19(金)(村田真)
山口晃 展──付り澱エンナーレ老若男女ご覧あれ
会期:2013/04/20~2013/05/19
そごう美術館[神奈川県]
ヴァーチュオーゾ山愚痴屋の横浜初の個展。これまでの仕事のアンソロジーのほか、「ひとり国際展」として「山愚痴屋澱エンナーレ」も開催。どんなもんかというと、これがアイディア一発勝負の即効アート。たとえば《銃声》という映像は、バババッという音が聞こえてくるので見に行くと、壊れかけた街灯が音を立てながら点滅してるだけだったり、《オーロラ》は東京の夜空に出現したオーロラの映像かと思ったら、窓ガラスに息を吐きかけた曇りだったり、《一本の赤い線》という絵画は、巨大なキャンバスにバーネット・ニューマンのごとく赤く塗っただけだったり。これらはおそらく、根をつめて描く細密描写のストレス発散としての役割もはたしているんじゃないだろうか。あと目に止まったのが五木寛之の小説の挿絵で、とくに「五、六人」と題する挿絵はなんと5.5人の顔が描かれているのだ(ひとつの顔だけ目が3つある!)。発想もすごいが、それをなにげに絵で表わしてしまう画力がすごい。
2013/04/19(金)(村田真)
Chim↑Pom「PAVILION」
会期:2013/03/30~2013/07/28
岡本太郎記念館[東京都]
2年前、渋谷駅に設置された岡本太郎の壁画《明日の神話》に福島原発事故の絵を付け足し、ひと騒動おこしたChim↑Pom。それが縁で今回、岡本太郎記念館で太郎との対決=コラボレーションとなった。しかしChim↑Pomは大先輩の太郎も敏子も見たことがない。そこで彼らの家だった記念館と太郎の墓を往復し、生と死を接続して福島原発につなげようと考えた。展覧会名にもなっている《パヴィリオン》は、記念館の一室をホワイトキューブに変え、奥のガラスケース内に直径4センチほどの太郎の骨片を展示するというインスタレーション。いかにも仰々しい。僕が「パヴィリオン」という言葉を初めて知ったのは、忘れもしない1970年の万博のとき。その万博のパヴィリオン内でもっとも仰々しく展示されていたのがアメリカ館の「月の石」だ。そういえば太郎が死んだ日に大きな彗星が墜ちたことも思い出した。万博、宇宙、太郎の死とつながっていく。それにしてもこの仰々しさはChim↑Pomらしくないなあ。らしさでいえば、手前の黒い部屋で見せていた《ゴミの墓》という映像インスタレーションのほうだ。これは夜中に太郎の墓場に忍び込み、穴を掘ってゴミを埋め上に墓碑を置いてくるという映像と、黒御影石をゴミ袋の形に彫った墓碑からなる作品で、いかにもChim↑Pomらしい。もっともChim↑PomらしいことばっかりやってるのもChim↑Pomらしくないが。ところで、例の福島原発事故の絵《LEVEL7feat『明日の神話』》は1階奥の太郎のアトリエのイーゼル上に飾られているが、どうやら隣で見ていた人はそれを太郎の絵だと思ったらしい。たしかに太郎の絵に似せて描いてあるし、それもありかな。
2013/04/20(土)(村田真)