artscapeレビュー
2014年04月15日号のレビュー/プレビュー
「野口哲哉の武者分類図鑑」展
会期:2014/02/16~2014/04/06
練馬区立美術館[東京都]
鎧兜をまとった武者ばかりつくってるアーティスト。武具甲冑も人物も見事なできばえで、明治期の彫刻置物を思い出させるが、素材は樹脂や化学繊維などを使い、サビや汚れも再現し、サイズも思ったより小さいせいか、どちらかといえば海洋堂あたりのフィギュアに近いかもしれない。いずれにせよ日本人ならではの超絶技巧が光る。いやそれだけでなく、細部を見ると鎧にシャネルの紋が入っていたり、兜にネコやウサギの耳がついていたり、背中にジェットエンジンを担いでいたり、甲冑がプラスチック製だったり、ヘッドフォンで音楽を聴いていたり、時代を超える荒唐無稽ぶりなのだ。いってみれば山口晃の立体版か。それにしてもまだ30代前半で、作品をつくり始めてから10年ほどしかたってないのに、出身地でも在住地でもない公立美術館で個展を開催できることに驚く。キャリアの問題もさることながら、精密な仕事にもかかわらずよくこれだけの量をつくったもんだと感心するのだ。ホンモノの甲冑や合戦図などを織り交ぜて「水増し」しているとはいえ、絵画も含めて100点近い出品はリッパなもの。本人以外の作品も合わせれば120点近くになり、けっこう見応えがあった。
2014/03/28(金)(村田真)
ハンマーヘッドスタジオ新・港区「撤収!」展
会期:2014/03/28~2014/04/06
ハンマーヘッドスタジオ新・港区[神奈川県]
2008年に横浜トリエンナーレの会場として建てられた4,400平方メートルもの広大なスペースをもつ新港ピアだが、11年のヨコトリには使われず、代わりにBankARTが特別連携プログラムとして「新・港村」を開設し、内部にさまざまな建造物を建ててイベントを展開。翌春には共同スタジオ「新・港区」として50余組のクリエーターが入居し、今夏のヨコトリまで2年間限定の共同スタジオとして活用されてきた。今回は撤収前のファイナル展となる。入居アーティストは石黒昭、牛島達治、開発好明、鎌田友介、さとうりさ、タカノ綾、松本秋則、ほか多数。ダンサーの中村恩恵、ギャラリーの青山|目黒、ヨコハマ経済新聞の支局も入居していたし、会田誠や曽谷朝絵のように個展準備のため期間限定でスペースを借りる人もいた(あ、ぼくも2週間だけお世話になりました)。結局、この建物ができてから6年間でもっとも有効活用できたのは、この2年間ではないだろうか。
2014/03/28(金)(村田真)
鶴ヶ島太陽光発電所 環境教育施設《eコラボつるがしま》
[埼玉県]
鶴ヶ島にて、藤村龍至の手がけた《eコラボつるがしま》を見学する。郊外住宅地に囲まれた工場跡地というロードサイド的環境を受けつつ、パブリックミーティングによる集合知の加算を経て、生成された建築だ。と同時に、ヴェンチューリ、東工大系列、篠原一男、カーンらのデザインを参照している。ゲンロンのトークイベントでも話題になった、藤村流シンボリズムの表現を試みたものだ。
2014/03/29(土)(五十嵐太郎)
《大宮前体育館》
[東京都]
荻窪にて、青木淳が設計した《杉並区大宮前体育館》を見学する。これも住宅地に囲まれているが、驚くべきは家よりも低い体育館とプールのヴォリュームだ。コンペでも、もっとも低い案だったらしい(槇文彦の案よりも)。低いが、広い屋上からの風景は意外に見たことがない。ザハの新国立競技場案とは対照的な考えだ。大宮前体育館の外周はSANAA的な曲線ではなく、分節したガラス面の連続で周囲のスケールと調整する。内部に入ると、深く掘られた地下から直方体のコンクリートのヴォリュームが入れ子状に立ち上がり、印象が変わる。この巨大な壁も近づくと、全体が生き物のようにゆるやかに波うち、また驚く。体育館の床の色彩やかわいいプールも印象的だ。ところで、通常の見学会と違っていたのは、杉戸洋、青木野枝、米田知子ら、あいちトリエンナーレにも参加した現代美術家が参加していたこと。やはり、アーティストとの親交が深い青木淳ならではだろう。
2014/03/29(土)(五十嵐太郎)
中村一美 展
会期:2014/03/19~2014/05/19
国立新美術館[東京都]
国立新美術館にて、中村一美展を見る。斜めの線、そして日本絵画の空間表現からインスピレーションを得て、戦後アメリカの抽象絵画の文脈で翻案した作品群が興味深い。力の入った展覧会である。特に、コンペで残らず、ヴェネチアビエンナーレ国際美術展の日本館では実現できなかったウォール・ペインティングは迫力の仕上がりだった。
2014/03/29(土)(五十嵐太郎)