artscapeレビュー

2014年04月15日号のレビュー/プレビュー

シンポジウム「札幌市資料館を再考する」~アートによる歴史的建造物の活用と展望~

札幌市資料館 2階研修室[北海道]

札幌へ。初めてテレビ塔に登る。名古屋のタワーと同様、今やそれほど高い構築物ではないのだが、東西の軸線上という都市計画的に重要な位置に置かれているので、やはり見晴らしがいい。続いて、札幌市資料館へ。1926年に誕生したかつての控訴院である。名古屋の市政資料館と同じ施設で、現在、この二都市だけに残るという。ここで札幌国際芸術祭2014プレフェスティバルのシンポジウム「資料館を再考する」の前半を聴講した。建築史家の角幸博は、この建物の意匠的な特徴や保存のあり方について。芹沢高志は、神戸のデザインセンターKIITOの試みと、横浜トリエンナーレ2005での近代建築活用の事例を紹介した。大変でも、あえて近代建築を使い続けることの意義を語る。

写真:上=札幌テレビ塔。中=テレビ塔からの眺望。下=札幌市資料館。

2014/03/23(日)(五十嵐太郎)

第2回札幌500m美術館賞グランプリ展「White Play」/Re:送っていただけませんか?

会期:2014/02/01~2014/03/28

札幌大通地下ギャラリー 500m美術館[北海道]

札幌は名古屋と同じく地下街が発展しているが、壁をアート展示に使う札幌大通地下ギャラリーの500m美術館にも立ち寄った。アワードでは、大黒淳一の羽根を風で飛ばし雪を連想させる作品がグランプリである。「Re:送っていただけませんか?」の企画展は、浅井裕介、五十嵐淳+北海道組、金氏徹平、磯崎道佳、東方悠平ほかが出品していた。

写真:大黒淳一

2014/03/23(日)(五十嵐太郎)

「好きです。さっぽろ(個人的に。)」トークフォーラム「景観開放」てのひらの都市計画/それぞれの都市空間

インタークロス・クリエイティブ・センター1階「Cross×Garden」[北海道]

インタークロス・クリエイティブ・センターの「景観解放 てのひらの都市計画/それぞれの都市空間」に参加する。イベントは投票で選んだ札幌景観48のカードの完成記念を兼ねていた。これは遊びながら、まちづくりを学べるというもの。行政が関わる景観関係イベントはいろいろ呼ばれたが、ここはもっともサブカル寄りで別の軸を打ち出している。トークでは、「景観をつくるもの」のプレゼンを行なう。ジョン・ハサウェイ(日本人)は、無重力と少女の世界を描く彼の絵を紹介する。これは村上隆のスーパーフラットも想起するが、よりアナログでマッドサイエンティスト的だ。観光社会学の岡本健は、森川嘉一朗の趣都論を地方×ツーリズムの文脈に展開する。ジョン・ハサウェイの絵は、神戸ビエンナーレ2013で初めて見たが、二次元の膨大過ぎるレイヤーによって情報量をひたすら増やす画法だ。これは時間がかかる。コミケや海外などでの作品集や自主制作の売上げといったお金の出入りのディテールを聞いたが、現時点では確かに商業出版にのせないほうがよさそう。

2014/03/23(日)(五十嵐太郎)

CIM[CITY IN MEMORY -記憶の街-]「記憶の倉庫」

会期:2014/03/01~2014/03/23(木~のみ)

堀川団地[京都府]

京都市にある築60年以上の「堀川団地」はかつて多くの人達の憧れだったという集合住宅。現在も住人がいるのだが、今回12名のアーティストが空き室を舞台にこの場所の「記憶」を見つめるという“体験の場”をつくりあげた。公開されたのは実際にこの団地の住人によって使われていたり、保管されていた衣類、多くの生活道具などがインスタレーションされた住居空間。私が想像していたよりも狭く、風呂もなかったのが意外だったのだが、この設えはかつての住人の暮らしや外の景色、その移り変わりに思いを巡らせた。昔この団地で暮らしていた人が訪ねてきて、集合ポストのひとつに現在もその名前が残っているのを見つけたというエピソードを聞いたことも感慨深く、部屋に染み込んだ生活の匂いがいっそう想像をかき立てた。老朽化で、現在再生計画が議論されている最中だという団地。その今後にも注目したい。


展示風景

2014/03/23(日)(酒井千穂)

COCHAE×夜長堂×横田百合(オトンコレクション)「だるまとこけし──楽しい郷土玩具トークショー」(コトコトこけし博2014)

会期:2014/03/21~2014/03/23

マヤルカ古書店[京都府]

昨年開催された会場を覗いたとき、多くの若い女性たちでたいへん賑わっていたのに驚いた「こけし博」。東北各地のこけしが出張展示販売されるイベントで、会場には伝統こけしの類だけではなく、美術やデザインのフィールドで活躍するアーティストによるこけしをモチーフにした作品も並ぶ。今年は関西を拠点に活動している木彫家の北浦和也や、「画賊」のメンバーとしても活躍している山西愛も出品参加していた。会期中は実際にこけしを制作するワークショップやトークイベントなども多数開催されていたのだが、私は郷土玩具にまつわるトークショーに参加してみた。これはおもにだるまとこけしをテーマにしたものだったのだが、こけしの“工人”となる条件、関西と関東のこけしへの関心度の違いなど、興味深い話題が次々と挙がり会場も盛り上がった。こけしなどの郷土玩具を通して伝統と革新を見つめる機会。充実した時間だった。


トークショー。左から、COCHAE、横田百合、夜長堂

2014/03/23(日)(酒井千穂)

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