artscapeレビュー

2015年09月15日号のレビュー/プレビュー

富岡製糸場

[群馬県]

竣工:1872年

学生のとき以来の訪問となる富岡製糸場へ。世界遺産となったために、びっくりするくらい人が押し寄せるが、それ以前はあまり見向きもされず、ブランドに認定されると、こうも状況が変わるのかと複雑な気分になる。大切に保存した片倉工業が偉いのだが、横浜は旧三井物産横浜支店生糸倉庫を壊してしまった。

2015/08/12(水)(五十嵐太郎)

柳澤孝彦《富岡市立美術博物館・福沢一郎記念美術館》

[群馬県]

竣工:1995年

柳澤孝彦の《富岡市立美術博物館》へ。展示は、武井武雄の絵本画と常設の福沢一郎である。年末にカーンの《キンベル美術館》を訪れたばかりなので、あまりにそっくりな外観と内部、細部に絶句した。リスペクトというのか?よくなった部分があれば、影響を受けたと言えるのだが。申しわけないが、これではばったもんに見える。

2015/08/12(水)(五十嵐太郎)

西沢立衛《軽井沢千住博美術館》

[長野県]

竣工:2011年

ローザンヌに行かなくては、という思いを改めて強くさせる、素晴らしい空間だった。順路もなく、迷宮のようだが、高低の差が無意識に館内の方向感覚を与えるのは興味深い。光庭から周囲の環境を取り込む手法は、ウィークエンドハウスから続く。ここで千住博以外の展示も見てみたい。

2015/08/12(水)(五十嵐太郎)

堤清二・辻井喬 ふたつの目 オマージュ展 Vol.2

会期:2015/07/26~2015/11/23

セゾン現代美術館[長野県]

セゾン現代美術館へ。堤清二・辻井喬 ふたつの目 オマージュ展で、こんなに多くの本を出していたことを知る。コレクションは80年代を強烈に思い出させる。いまなら福武のベネッセや森ビルなのだろうが、ただ収集するのではなく、辻井として自ら作品について文章も書き、アーティストとの共作も行なうあたりがすごい。今回の美術館訪問は、菊竹清訓の建築が目的ではなく、名古屋市美で見た若林奮展で、彼がここの庭で作品を手がけたのを知ったからだ。正門、鉄橋、コールテン鋼の斜面など、背後にヴォリュームを感じさせる表層をつくり出しながら、いずれも巧みなランドスケープをつくり出している。彼以外の野外彫刻もあるが、全体として箱根の彫刻の森に比べて、大人の空間だ。

2015/08/12(水)(五十嵐太郎)

artscapeレビュー /relation/e_00031978.json s 10114945

ZOER & VELVET展覧会「BLAS」

会期:2015/08/07~2015/08/29

カイカイキキギャラリー[東京都]

お盆の時期なのに開いている。さすが中小のギャラリーと違ってマネジメントがしっかりしてるなあ。ZoerとVelvetはフランスの若手グラフィティ・アーティストで、ギャラリーの壁3面にキャンバス布を張り、その上に描いている。高さ3メートル、全長20メートルくらいあるだろうか、ギャラリー史上最大の作品だそうで、1カ月間滞在しこの場で制作したという。タイトルの「BLAS」は“blasphemy(神への不敬、冒涜)”の略で、現在ヨーロッパで大きな問題になっている異教徒・異民族の移民・難民への差別といった社会問題をテーマにしたもの。地中海岸だろうか、海辺や難民キャンプのようなイメージをコラージュした風景が、軽快なタッチで描かれている。日本ではほとんど話題にならない社会的なテーマを取り上げるのも、たった1カ月でこれだけの超大作を仕上げるのも、グラフィティ・アーティストならではのこと。

2015/08/13(木)(村田真)

2015年09月15日号の
artscapeレビュー