artscapeレビュー
2015年09月15日号のレビュー/プレビュー
蔡國強──アート・アイランド
会期:2015/07/28~2015/09/06
アートフロントギャラリー[東京都]
「大地の芸術祭」に合わせ、十日町のキナーレに蔡國強の巨大インスタレーション《蓬莱山》が展示されているが、その制作と並行してつくったドローイングを展示。ドローイングといっても蔡が絵筆を振るうわけではなく、子どもたちが描いた亀、飛行機、ロケットなどのかたちを和紙の上に並べ、上から火薬をまいて火をつけ、一瞬の爆発によって輪郭を描き出すというもの。気になるお値段は、小さいほう(B全)でなんと1,850万円というから驚き。これが中国伝統の錬金術? などとはいわない。収益の一部はユネスコ平和アーティストプロジェクトに寄付されるのです。
2015/08/07(金)(村田真)
画家たちと戦争:彼らはいかにして生きぬいたのか
会期:2015/07/18~2015/09/23
名古屋市美術館[愛知県]
14名の画家を選び、それぞれの戦前期、戦中期、戦後期の作品をコンパクトに並べて、その変遷を比較する。作家ごとに戦争をどう受けとめたのか、その違いがよくわかり興味深い。香月泰男など、広島現美の戦争展示と共通する作家も含まれていた。カタログ巻末の年表というか、日月表の資料がえらく充実している。
2015/08/07(金)(五十嵐太郎)
アートラボあいち大津橋 オープニングセレモニー
会期:2015/08/07
アートラボあいち大津橋[愛知県]
アートラボあいち大津橋のオープニングに出席した。あいちトリエンナーレ2013のオープンアーキテクチャーのプレ企画で見学会を実施し、『あいち建築ガイド』でも紹介した1933年の近代建築を転用した施設である。当時は資料室として天井まで紙の山という状態だったが、天井高のある展示空間に変身していた。アートラボあいち大津橋の一階が、戦争に関する資料館として公開されたことに伴い、上階がアートスペースになったらしい。なお、アートラボあいち長者町も、同日にオープンした。リゴ23の壁画が残るトリエンナーレ2013のレガシー・ビルの上階を用いた施設である。2カ所のアートラボを用いて、3大学合同展覧会「Sky Over I」を開催していた。
上=アートラボあいち大津橋、下=アートラボあいち長者町
2015/08/07(金)(五十嵐太郎)
ダブル・インパクト 明治ニッポンの美
会期:2015/06/06~2015/08/30
名古屋ボストン美術館[愛知県]
ボストン美術館と東京藝術大学のコレクションを使い、絵画や彫刻を通じて、近代に西洋が目撃した日本、日本が出会った西洋のイメージをたどる好企画だった。互いに異なるものと初めて遭遇した明治という独特の時代の面白さが浮かびあがる。
2015/08/07(金)(五十嵐太郎)
フォトふれ NEXT PROJECT EXHIBITION 2015
会期:2015/08/08~2015/08/09
杉山美容室隣空き店舗[北海道]
31回目を迎えた東川町国際写真フェスティバルでは、毎年イベントの運営をサポートするボランティア(フォトふれんど)を募集している。写真学校や大学の写真学科の学生を中心に、全国から北海道に集まるボランティアたちは、いろいろな出会いを経て成長し、それぞれの場所に戻って活動を続けてきた。そのフォトフレンドのOB,OGの有志たちが、「表現者として帰ってきて」、昨年から写真展を開催するようになった。休業中の店舗をそのまま利用した展示は、なかなか見応えがあった。
今回の参加者は太田悦子、詫間のり子、伝田智彦、土肥志保美、永井文仁、藤川麻紀子、フジモリメグミ、横山大介、吉田志穂の9名。2007年の写真新世紀準グランプリの詫間のり子や、2014年に1_WALL展のグランプリを受賞した吉田志穂など、既に一定の評価を得ている者もいるが、多くはこれから先に自分の作品世界を確立していかなければならない時期にある。考えてみれば、彼らのような「中堅」の写真作家たちが作品を発表していく機会は、個展を除いてはあまり多いとはいえない。このような機会に、互いに競い合いながら、自分の作品のレベルを確認し、次のステップにつなげていくのはとてもいいことだと思う。
それぞれ、のびのびと自分の世界を展開していたのだが、その中でも横山大介の作品「Telephone Portrait」に可能性を感じた。横山は吃音者であり「発話時に言葉がうまく発せられない時があり、会話でのコミュニケーションに違和感をいだいて」いるのだという。その彼が「電話をかける」という行為をする人物を被写体に選ぶことで、発語という行為をあらためて見直そうとしている。まだ数は少ないが、これから先にどんな展開があるのかが楽しみだ。残念ながら、他の参加者たちの多くは、作品をどう展開し、定着するのかというプロセスにのみ神経を集中し過ぎていて、制作の動機がくっきりと見えてこないように感じた。会場の都合で、来年以降にも開催できるかどうかは微妙だというが、形を変えてぜひ継続していってほしい企画だ。
2015/08/08(土)(飯沢耕太郎)