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クラーナハ展──500年後の誘惑

2017年04月15日号

会期:2017/01/28~2017/04/16

国立国際美術館[大阪府]

ドイツ・ルネサンスを代表する画家として知られる、ルカス・クラーナハ(父:1472-1553)の日本初の展覧会。「宮廷画家」、「肖像画家」、「版画家」として、工房での量産体制を築きビジネスに長けていたクラーナハの各画業に加え、独特の「裸体表現」が後世に与えた影響、男性を誘惑する「女性」のイメージ、マルティン・ルターの宗教改革に深く関わりながら生み出された作品群、という6つの多様な切り口から91点の作品を展覧する。見どころはなんといっても、ウィーン美術史美術館所蔵の《ホロフェルネスの首を持つユディト》(1525/30頃)。同作にみる、ユディトの肌の輝くような質感、女性イメージの持つ力、豪華な衣服とジュエリーの素材感までも写し取る写実的描写は、修復に3年かかったという見事な復元技術の賜物。単に大回顧展として終わらせない本展の工夫は、近代日本におけるクラーナハの受容に始まり、西洋20世紀におけるピカソやデュシャン、さらには現代の川田喜久治と森村泰昌に渡るオマージュの系譜も示しているところ。それにしても、出展作《ヴィーナス》(1532)に代表されるような、クラーナハ作品のビジュアル・イメージは強烈で何とも忘れ難く、絵画作品を見る歓びを教えてくれる。[竹内有子]

2017/04/06(木)(SYNK)

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