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総合開館20周年記念 山崎博 計画と偶然

2017年04月15日号

会期:2017/03/07~2017/05/10

東京都写真美術館 2階展示室[東京都]

山崎博自身が発案したという展覧会のタイトル「計画と偶然」がとてもいい。山崎の写真は、基本的に被写体に依拠するのではなく、カメラとフィルムという光学装置をある条件の下で使用し、そこに発生してくる「光学的事件」をあたう限り精確に捉えることをめざしている。そこには、「計画」を厳密な手続きで実行することが求められるのだが、実際にはもくろみどおりに事が運ぶことはまずない。代表作といってよい、海面から天空に躍り出る太陽の軌跡を、ND(減光)フィルターを使って長時間露光で写しとめた「HERIOGRAPHY」のシリーズにしても、天候、季節、雲の有無、海面の状態などによって、どんな画像が定着されるかは「偶然」に身を委ねるしかない。つまり「計画と偶然」という、おそらく写真表現のあり方を最も本質的に指し示す言葉の射程に、山崎の45年以上にわたる写真家としての軌跡が、すべて含み込まれているのだ。
今回、東京都写真美術館で開催された、美術館レベルでは最初の大規模展となる本展には、初期から近作まで、211点以上の作品が、ROOM1からROOM7まで、7つのパートに分けて展示されていた。それを見ると、きわめて多様なアイディアに基づく写真群であるにもかかわらず、揺るぎないものの見方が貫かれているのがわかる。自宅の窓からの眺めをさまざまな手法で撮影した「OBSERVATION 観測概念」(1974)と、最新作の「UNTITLED(水のフォトグラム)」(2017)の両方に、自分の手が写り込んでいるのが象徴的だ。山崎には、あくまでも自分の身体の位置にこだわりつつ、写真を媒介にして現実世界のあり方を観測・探究しようとする一貫した姿勢がある。あらためて、その弛みない写真家としての歩みを、じっくりと見直すことができた。
展示構成については、一言いいたいことがある。ROOM1からROOM7までの区分と、作品の並べ方とが、特に後半になると混乱してくる。各作品にはキャプションがついてないので、観客は入口で渡されるリストの番号を頼りに見ていかなければならないのだが、その番号順に作品が並んでいないので、より混乱に拍車がかかる。必ずしも年代順に展示する必要はないが、もう少しすっきりと会場を構成してほしかった。

2017/03/06(月)(飯沢耕太郎)

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