artscapeレビュー

武田五一の建築標本──近代を語る材料とデザイン──

2017年04月15日号

会期:2017/03/10~2017/05/23

LIXILギャラリー大阪[大阪府]

京都高等工芸学校(現:京都工芸繊維大学)図案科教授に続き、京都帝国大学(現:京都大学)工学部建築学科の創設に尽くして教授を務め、関西の近代建築を牽引した武田五一(1872-1938)の業績を紹介する展覧会。武田の建築・デザイン教育に見られる近代性を、上記二つの大学で収集された教育標本と資料から読み解いている。そのひとつめが建築「材料」に対するまなざし。国内で新しい技術により量産され、建築素材に用いられるようになったタイル、ガラス、テラコッタ、近代の生活で必要になった水栓金具や錠前などの採集サンプルが展観される。どれも西欧における先行例を踏まえつつ、武田ら教育者たちによって建築標本としてコレクションされたものである。また大学教育で国内外の建築史・美術工芸史を教えるために使われた模型、建具雛形、彼の学生たちが記した講義ノートからは、当時最新の建築デザインの動向を西欧で学んできた武田の幅広い知見を見て取ることができる。興味深かったのは、武田が講じた色彩学の課題作品。彼は学生に蝶の実物標本から、色彩の構成と羽の模様の図化までさせている。武田の浩瀚な知識とデザイン実践の先進性に驚かされる。[竹内有子]

2017/04/01(土)(SYNK)

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