artscapeレビュー

草野庸子「EVERYTHING IS TEMPORARY」

2017年04月15日号

会期:2017/03/01~2017/03/13

QUIET NOISE arts and break[東京都]

草野庸子は1993年、福島県生まれ。桑沢デザイン研究所卒業後、2015年に第37回キヤノン写真新世紀で優秀賞(佐内正史選)を受賞している。今回の個展は写真集『EVERYTHING IS TEMPORARY(すべてが一時的なものです)』(Pull the Wool)の刊行に合わせてのもので、カフェ・ギャラリーの壁面に大小の写真を撒き散らすように展示していた。
このところ、若い写真家たちが、フィルム使用のアナログカメラの写真を発表することが多くなってきている。デジタルカメラとともに育った彼らにとって、アナログのノイズの多いプリントが逆に新鮮に見えるのだろう。くっきりと、シャープに事物を捉えるよりも、コンパクトカメラや「写ルンです」の、ややふらつき気味のフレーミングのほうが、「せつなさ」や「はかなさ」を定着するのに向いているように思えるのかもしれない。草野の写真にも、まさに「EVERYTHING IS TEMPORARY」という感情が、過不足なく写り込んでいる。白木の枠で壁面を囲って、その中に写真を並べたり、モノクロームとカラーの写真を併置したりするなど、作品のインスタレーションにも工夫が凝らされていた。
ただ、このままだと、「日々の泡」をすくい取っただけのありがちな写真で終わりそうだ。展示作品には花の写真が目につく。ジョエル・マイヤーウィッツの『ワイルド・フラワーズ』(1983)のように、日常の場面で花の姿を目にすると、かなり意識的にシャッターを切っているように見える。そのあたりに焦点を絞って作品化することも考えられるだろう。何を伝えたいのかをより明確に研ぎ澄ますとともに、意欲的に表現の領域を拡張していってほしい。

2017/03/02(木)(飯沢耕太郎)

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