artscapeレビュー
「写真家金丸重嶺 新興写真の時代 1926-1945」
2017年04月15日号
会期:2017/02/18~2017/03/03
日本大学芸術学部芸術資料館[東京都]
金丸重嶺(かなまる・しげね、1900-1977)の名前を知る人も少なくなってきたのではないだろうか。日本の広告写真の草分けの一人であり、戦後は日本大学芸術学部写真学科教授として写真教育に携わり、日本広告写真家協会(APA)会長など、写真界の要職を歴任した。だが、生前の名声と比較すると、没後はやや忘れられた存在になっていたように思える。「没後40年記念展覧会」として企画された今回の展示は、その彼が写真の世界で頭角を現わしていく1920~40年代にスポットを当てるものであり、約100点の写真作品と資料が出品されていた。
展示は「東京」、「金鈴社」、「P.C.L」、「満州」、「ベルリンオリンピック」、「欧州風景」、「国策宣伝」の7部で構成されている。写真家としてスタートした時期の初々しい写真群から、1926年に鈴木八郎とともに設立した「日本最初の商業写真スタジオ」である「金鈴社」の活動、1936年のベルリンオリンピックの取材とその後の欧州旅行、そして戦時体制下の国策宣伝への関与などが、手際よく紹介されていた。初めて見る作品・資料も多く、1930年代のモダニズム的な「新興写真」の担い手の一人でもあった彼の、写真家としての活動ぶりがくっきりと浮かび上がってきた。今後は、代表的な著書である『新興写真の作り方』(玄光社、1932)をはじめとして、戦前・戦後の写真界とのかかわりをより広く概観する展示を見てみたい。
なお、本展のカタログとして『FONS ET ORIGO Vol.XX, No.1 Spring 2017 没後40年記念 写真家金丸重嶺 新興写真の時代 1926-1945』(日本大学芸術学部写真学科)が刊行されている。
2017/03/01(水)(飯沢耕太郎)