2020年03月15日号
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artscapeレビュー

「冩真に歸れ」展

2010年10月15日号

会期:2010/09/03~2010/09/19

ZEN FOTO GALLERY[東京都]

第二次世界大戦前の日本の写真表現が、相当に高度な段階に達していたことは強調しておいていいだろう。東京の月刊写真雑誌『光画』(1932~33年)のグループ(野島康三、木村伊兵衛、飯田幸次郎、堀野正雄など)、関西の浪華写真倶楽部、丹平写真倶楽部、芦屋カメラクラブなどに所属する写真家たち(安井仲治、小石清、花輪銀吾、中山岩太、ハナヤ勘兵衛など)が、競い合うように前衛的、実験的な作品を発表していた。それらはひとまとめにして「新興写真」と称される。その高度な技術は、同時代の欧米の写真家たちの作品と比べても決してひけをとらない。しかも、「新興写真」を主導していたのはほとんどがアマチュア写真家たちだった。これも現在と比較してまったく違っているところで、彼らののびやかな冒険精神こそが、同時代の写真表現の最先端を切り拓いていったのだ。
今回の「冩真に歸れ」展は、東京・渋谷のZEN FOTO GALLERYを主宰するマーク・ピアソンがここ数年の間に蒐集した作品によるものである。貴重なヴィンテージ・プリントを含む作品の質はかなり高い。木村伊兵衛、島村逢江、中山岩太、ハナヤ勘兵衛など著名作家の作品に加えて、氏名不詳のアマチュア写真家のアルバムに貼られていた写真も展示されていた。風景、人物など多彩な題材だが、「新興写真」のシャープな画面構成の感覚が的確に表現されていて、なかなか面白い作品である。これを見ても、当時のアマチュア写真家たちのレベルの高さがよくわかるだろう。
なお、同時期に四谷のギャラリー・ニエプスでは、大正~昭和初期の500枚近い絵はがきによる「花電車」展(9月7日~19日)が、茅場町の森岡書店では、『光画』の実物を展示する「光画」展(9月8日~18日)が開催された。これらをあわせて見直すことで、「戦前の日本写真の輝き」をより生々しく追体験することができるのではないだろうか。

2010/09/08(水)(飯沢耕太郎)

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