artscapeレビュー

照沼ファリーザ「食欲と性欲」

2010年10月15日号

会期:2010/09/06~2010/09/18

ヴァニラ画廊[東京都]

「意外に」というと失礼だが、なかなか面白い展示だった。AV女優・監督やミュージシャンとしても活動しているという照沼ファリーザの写真作品には、まさにタイトルにもなっている「食欲と性欲」というコンセプトが明解に貫かれていて、観客を巻き込んでいくインパクトとパワーがある。会場の壁全体に大小70点あまりの額入りの作品がちりばめられているのだが、その半数以上には彼女自身(ほとんどヌード)が写っている。当然ながらその身体的な表現力が高いので、視覚的なエンターテインメントとして充分に楽しめる。それだけでなく、ポーズのとり方に「自分をこんなふうに見せたい」という意志が明確にあらわれているので、すっきりとした爽快な作品に仕上がっていた。ともすれば、「際物」になりそうなテーマなのだが、エロティシズムの発散の仕方が実に開放的で気持ちがいいのだ。
彼女自身が画面の中にあらわれてこない作品も、それはそれで面白い。可愛らしさとグロテスクとエロティシズムの三位一体。使われている小物やオブジェとその配置の仕方に、うつゆみこの作品と共通するものがあると思っていたら、実際に二人は知り合いで、うつが提供したものもあるのだそうだ。さらに生産力をあげつつ、別なテーマにも積極的にチャレンジしてほしい。技術をさらに磨くとともに、知名度、タレント性を活かしていけば、「写真家」としても独特の世界をつくっていけそうな気がする。

2010/09/14(火)(飯沢耕太郎)

2010年10月15日号の
artscapeレビュー