2020年03月15日号
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artscapeレビュー

陰翳礼賛 国立美術館コレクションによる

2010年10月15日号

会期:2010/09/08~2010/10/18

国立新美術館 企画展示室2E[東京都]

独立行政法人化した東京国立近代美術館、京都国立近代美術館、国立西洋美術館、国立国際美術館、国立新美術館の5館による共同企画展。普段は各美術館の常設展示の枠でおこなわれているような企画だが、さすがに規模が大きくなり、所蔵作品の多様性もあってかなり見応えがあった。1952年に東京国立近代美術館がオープンしてから半世紀以上が過ぎ、各美術館の所蔵作品が曲がりなりにも充実してきたことが、展示を見ていてもわかる。
「影あるいは陰」をテーマとする4部構成の展示の内容もしっかりと練り上げられている。特に東京国立近代美術館と京都国立近代美術館のコレクションを中心とした第3部「カメラがとらえた影と陰」は、写真作品で構成されており、ウジェーヌ・アジェ、アレクサンドル・ロトチェンコから森山大道、古屋誠一まで、モノクローム・プリントにおける「影の美学」がバランスよく紹介されていた。光によってつくられる影や陰だけでなく、写真の場合は被写体を逆光で撮影することでシルエットとして表現する手法もよく使われる。さらに作品によっては、実体とその影という関係が逆転して、むしろ影の方が中心的な主題として迫り出してきている場合もあるのが興味深い。第4部「影と陰を再考する現代」のパートに含まれる、写真を用いた現代美術作品(榎倉康二、杉本博司、トーマス・デマンドなど)も含めて、このテーマは写真作品のみに絞り込んで、もっと本格的に追求していってもよいのではないかと感じた。

2010/09/15(水)(飯沢耕太郎)

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