artscapeレビュー

林田摂子「箱庭の季節」

2010年10月15日号

会期:2010/09/24~2010/10/03

Place M2 gallery[東京都]

新宿御苑前のPlace Mの階下に、もうひとつ新しいギャラリーが誕生した。名づけてM2 gallery。瀬戸正人が主宰する写真ワークショップ「夜の写真学校」のメンバーを中心に運営していくのだという。瀬戸、坂口トモユキに続く三人目の個展が林田摂子の「箱庭の季節」である。このシリーズは2000年、2009年に続く三回目の展示で、長崎の母方の実家とその周辺を撮影している。先頃ようやく写真集として刊行された『森をさがす』(Rocket)とともに、彼女のライフワークとして成長していってほしいシリーズだが、今回作品を見ながら「これでいいのだろうか」という思いを強くした。
林田はとても力のある写真家で、その撮影ぶりには安定感があり、写真を組み合わせて並べていく能力も高い。この「箱庭の季節」にしても、過去、現在、未来と連綿としてつらなっていく一族の暮らしの細部が的確にとらえられ、ゆったりとした時の流れを感じさせる気持ちのいい作品に仕上がっている。だが、このままだと緊張感を欠いた、穏やかなイメージが淡々と続くだけで終わってしまいそうな気もする。仮に波風が立つにしても、近親者の誕生や死のような予測の範囲内におさまってしまいそうだ。むしろ『森をさがす』のように、「物語」としての大胆で緊密な構築をめざすべきではないだろうか。いまのような「大河小説」ではなく、むしろ「短編」のつらなりのような構成の方が、このシリーズには向いているような気もする。

2010/09/26(日)(飯沢耕太郎)

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