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artscapeレビュー

滝口浩史「つづれおり─遺─」

2010年10月15日号

会期:2010/09/28~2010/10/10

TAP Gallery[東京都]

滝口浩史は2001年に東京藝術大学デザイン科を卒業。2004年に「写真新世紀」に出品した「狭間」で準グランプリ(荒木経惟選)を受賞した。翌年開催された受賞記念展で展示されたのが「つづれおり」のシリーズで、今回のTAP Galleryでの個展の出品作はその続編にあたる。
2005年の展示では元気な姿で写っていた父方の祖父母と母方の祖母のうち、祖父は亡くなり、母方の祖母は寝たきりの状態になった。その現在の状況(祖父の葬儀の際の写真を含む)を撮影して大きく引き伸ばした10点のプリントのほかに、祖父が実際に使っていたという机と椅子を会場に運び込み、机の上と引き出しに彼らが写っている古い写真を無造作に積み上げるインスタレーションを試みている、ギャラリーはそれほど大きなスペースではないのだが、むしろその狭さを逆手にとって的確に写真を選択し、インスタレーションしていく手際がとてもうまいと思う。
闘病中の義母にカメラを向けた「狭間」もそうなのだが、滝口の語り口には、むしろテーマを絞り込み、それほど多くない枚数で出来事の芯になる場面をストレートに出していく方が向いているのではないだろうか。2009年に発表された「PEEP」のシリーズ(さまざまな職業の男女を、仕事、自宅、お気に入りの時間という3つの場面で撮影)では、コンセプトにこだわり過ぎて視点が拡散してしまい、彼のよさがうまく引き出されていなかった。「つづれおり」には、もっと大きなシリーズへと成長していきそうな手応えを感じる。

2010/09/29(水)(飯沢耕太郎)

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