2020年02月15日号
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artscapeレビュー

笹岡啓子「CAPE」

2010年10月15日号

会期:2010/09/21~2010/10/17

photographers’gallery[東京都]

photographers’galleryの創設メンバーのひとりである笹岡啓子は、同ギャラリーを中心に、広島・原爆記念公園とその周辺を撮影したモノクロームの「PARK CITY」とともに、カラーの6×6判による風景写真のシリーズを発表してきた。「限界」「観光」「水域」、あるいは今年6月にRat Hole Gallery Viewing Roomで開催された個展では「EQUIVALENT」といったタイトルで発表(同ギャラリーから同名の写真集も刊行)されてきたこれらの写真群には、ほぼ共通した特徴がある。
被写体になっているのは、海辺、森、岩場といった境界、あるいは周縁の空間で、自然と人工物が混じり合っているような場所が多い。さらにその多くに、さりげなく「ヒト」の姿が写り込んでいるのが気になる。ということは、これらの写真は被写体となる場所を純粋に「風景」として自立させることをめざしているのではなく、むしろもっと曖昧に生活、観光、宗教といった「ヒト」の営みを含み込むように設定されているといえるだろう。それは、今回の「CAPE」の展示でも同じで、何枚かの写真では、海に突き出た「岬」という象徴的な空間性は後ろに退き、浜辺で潮干狩りをする人びとのなんとも散文的な場面が前面に出てくる。「ヒト」の姿はむろん確信的に選択されているのだが、シリーズの中に純粋な、人気のない「風景」もまた組みこまれていることで、作品全体の構造がややわかりにくくなっている気もする。中間距離で撮影された、所在なげにたたずむ「ヒト」のあり方をもっと強く押し出してくることで、このシリーズの骨格がきっちりと定まってくるのではないだろうか。

2010/09/26(日)(飯沢耕太郎)

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