artscapeレビュー
ハーブ&ドロシー
2010年10月15日号
会期:2010/09/09
渋谷ショウゲート試写室[東京都]
60年代からコツコツと買い集めた現代美術作品2,000点以上を、ワシントンのナショナルギャラリーに寄贈して話題になったハーブとドロシーのヴォーゲル夫妻。チャック・クロース、クリスト&ジャンヌ=クロード、リチャード・タトルらアーティストの証言を交えて、ニューヨークの古アパートに慎ましく暮らすこの老夫婦を追ったドキュメンタリー映画。これはおもしろい。なにがおもしろいかって、まず、ふたりとも(とくに夫のハーブの)背が小さいこと。小さな夫婦が小さなアパート(1LDK)に住み、小さな(つまり安い)作品ばかりを買ってるうちに、アパート中が作品に占拠されてしまうというドタバタ劇。ハーブが郵便局に勤め、独学でアートの知識を身につけたというのも示唆的だ。彼らの情報収集は徹底し、おそらく収入(だけでなく全生活)の大半をコレクションに注入しているようだが、作品購入は必ずしも計画的とはいえない。むしろ無計画といったほうがいい。ひとことでいえば、アウトサイダー・コレクター。
2010/09/09(木)(村田真)