artscapeレビュー
私を見て! ヌードのポートレイト
2010年10月15日号
会期:2010/07/31~2010/10/03
東京都写真美術館 3F展示室[東京都]
東京都写真美術館の所蔵作品を中心としたコレクション展は、今年は「肖像」をテーマとする連続企画展である。その第二弾として「ヌードのポートレイト」展が開催された。ヌード・フォトは多くの場合、「撮る側」(その多くは男性)の視点で語られることが多い。ところがこの展覧会は、タイトルを見てもわかるように「撮られる側」の自己主張=「私を見て!」に注目している。
たしかにヌード撮影には写真家とモデルの共同作業という側面があり、一方的な「撮る─撮られる」という関係が、なし崩しに解体してしまうこともありうる。ただし、展示の流れは「第1章 邂逅」「第2章 表現」「第3章 家族」「第4章 自己(アイデンテティー)」の四部構成で、写真の黎明期からピクトリアリズム、モダニズムの時代を経て、より対人的な関係意識が強い現代写真に至るというきわめてオーソドックス、というより紋切り型のもので、せっかく打ち出した「私を見て!」というモデルの側からの視点が貫かれているとは思えなかった。また、写真に付されたキャプションが、当たり障りのない解説に終始しているのも気になった。ラリー・クラーク、ナン・ゴールディン、ジョエル・ピーター・ウィトキンといった、むしろ丁寧な解説が必要な作品にキャプションがないのはどういうわけだろうか。「問題作」を避けたとしか思えないのが残念だ。
小関庄太郎の、女子学生をモデルにしたという1932年の連作、深瀬昌久の「幸代」シリーズ(1961年)など、あまり展示される機会がない作品をじっくり見ることができたのはよかった。まだまだ眠っている収蔵品がたくさんありそうだが、どうやらコレクション展の限界も見えてきたようだ。
2010/09/24(金)(飯沢耕太郎)