artscapeレビュー
中比良真子 展 Stars on the ground
2010年10月15日号
会期:2010/09/14~2010/09/26
neutron kyoto[京都府]
夜の街中の風景を俯瞰で描いたモノトーンの作品が並んでいた。中比良の過去の作品ですぐに思い浮かべるのは、水面に周辺の風景が映り込む様子を描いたものや、余白をあえて大胆に取り入れた風景だったので、今回、シンプルに描かれた作品は意外だったのだが、聞くと夜景を描いたシリーズは昨年から制作、発表されていたのだという。マンションや鉄道、家々に灯る光がぽつぽつと点在する風景の一連の絵画は、一見、さりげなさすぎるほど地味で平凡なイメージなのだが、夜空の星になぞらえたタイトルを見ながらじっくりと画面を見ていくと、その丁寧な観察と細かな描写に気がついて、想像がじわじわと膨らんでくる。建物に灯る小さな白い光の粒がそれぞれのドラマを秘めているように見えてくるのだが、それは中比良の細やかな感性にそっと近づくような気分でもあった。奇をてらわない等身大の作家の感覚や言葉のイメージが快く、個人的には以前の作品よりもむしろ中比良らしい印象もあり、次回が楽しみになった。
2010/09/15(水)(酒井千穂)